2015年8月24日月曜日

風鐸の音色 〜ロリュオス遺跡群〜

午後3時にNくんと共にホテルを出発し、シェムリアップの街から10キロほど離れたところにあるロリュオス遺跡群を見学しに行きました。ロリュオス遺跡群には三つの有名な寺院があり、プラサット・バコン、プラサット・プレア・コー、そしてプラサット・ロレイです。機織りをさせてもらっている工房は昨年までバコンの近くにあり、ロリュオス地区にはよく行っていたのですが、寺院の見学は実は久しぶりです。

まずはロレイへ向かいました、ロレイは他の二つと少し離れたところにあるので、これは他の二つよりも久しぶりの再訪でした。レンガ作りの塔がもともとは5つあったのですが、完璧に残っているものは一つもありません。現在、修復中なのか、すべての塔に足組が組まれ、なんとも痛々しい状態でした。レリーフも破損していたり、失われてしまっていたりするものばかりでした。ただ、ある塔の入り口の柱に刻まれた碑文は一見の価値がありました。

ロレイの塔の破風

もちろん、読めません。Nくんも読めません。古クメール語で書かれているので、文字も変化してきていますし、単語も変わっているので、現代人には読めないのです。もちろん、このアルファベットはあれかな、くらいはわかるものもありますが、基本的にはまったく読めません。それでも、ここロレイの碑文は文字がとてもきれいだったのです。博物館や遺跡で様々な碑文を見てきましたが、これまた文字には個性が出るというか、それぞれの碑文の文字は異なります。素人の私でも、読みやすい字だな、とか、わかりにくい文字だな、という感想を持ちます。その中で、ここロレイに碑文の文字はとても整った綺麗な文字だったのです。

とても丁寧に彫られた古クメール文字
塔の近くには現代のロレイ寺院もあります。そして、オレンジ色の袈裟を着たお坊さんも何人かいました。塔の後ろに回ってみると、小さなオープンエアの小屋があり、子どもたちがお坊さんから何かを教わっているところでした。まさに日本の寺子屋のようです。見学はしても大丈夫とのことだったので、後ろから少し見学させてもらいました。何の勉強だったのかよくわからなかったのですが、先生のお坊さんは子どもたちにいろいろ質問したりしながら授業を進めていて、なんか楽しそうでした。

勉強中
お金がなくてなかなか学校に通えない子どもたちのための寺子屋のようですが、隣の部屋には15台ほどコンピューターまであり、驚きました。どうやら、なんらかのスポンサーやボランティアがいるようで、一応このような設備を整えることができるのだそうです。以前には日本人の日本語の先生もいたのだとか。小さな図書館と書かれた部屋には、確かに日本語の本も数冊置いてありました。

次に向かったのはバコンです。山岳寺院の一つです、個人的には好きな形の寺院です。参道を歩いているときでした。カラーン、コーン、カラーン、コーンととても澄んだ音色が聞こえてきました。近くにある現代のバコン寺院の屋根に取り付けられた風鐸の音でした。風が吹くと、とても綺麗な音色を響かせます。そして気付いたのです。人がいなくてとても静かだということを。

バコンの経堂と現在のバコン寺院

屋根に下がる風鐸

青空に映えるバコン寺院
バコンに残る有名なレリーフ
バコンの塔に残るナーガと昼間の月

ロリュオス遺跡群の三つの寺院すべても東向きに建てられている遺跡なので、写真などのことを考えると、やはり午前中がベストなのはわかっていたのですが、まさかこの時間にこれだけしんとするとは思っていなかったのです。人はぽつぽつは見かけました。ただとても静かなのです。だからこそ、風鐸の音がとてもよく響くのです。自分がいる場所で風が吹いていても、風鐸のある場所では吹いていなかったり、その反対だったり。遺跡に登りきったあとも、日陰に腰掛けてしばし風鐸の音色を楽しみました。日本の塔にも風鐸がありますが、あまり音色というのを聞いた記憶がありません。ここの風鐸が風に揺れやすいのか、私がただ日本の風鐸の音を聞きそびれているだけなのかわかりませんが、とにかくバコンの風鐸の音色がとても印象的でした。

バコンの最上階からの眺め

そして最後のプレア・コーです。こちらもとってもとっても静かでした。プレア・コーも5つの塔がありますが、こちらは修復が終了しているのか、5つとも綺麗に保存されています。破風などにレリーフも綺麗に残っているところが多く、門番のドゥラパーラやアプサラもそれなりに綺麗に残っていました。ここでも碑文が残されていましたが、やはりロレイとはまったく字体が異なります。そして個人的に嬉しかったのは、ガルーダのレリーフがたくさんあったことです。特に破風に残されたレリーフはなかなか見応えのあるものも多く、ガルーダも立派に残されていました。プレア・コーとは聖なる牛、という意味を持ち、塔の前に大きな牛の像が3体ありますが、個人的にはガルーダにばかり目がいってしまいました。

プレア・コーの名前の由来 聖なる牛
聖なる牛 ナンディン
プレア・コーの破風

後ろに立つ三つの塔

何を表しているのだろう・・・

5時半近くになり、西日がきつくなってきました。そろそろ遺跡見学も終了の時刻です。早朝と閉門直前。場所によっては静かに見学することがまだできるのだと、改めて確認できました。




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