2015年4月30日木曜日

日本最大の文殊菩薩 ~安倍文殊院~

バスの本数があまりにも少ないので行きはタクシーにしました。歩けない距離ではありませんが、この暑さの中を歩く元気はありません。値段も840円だったので、それほど痛い出費ではありませんが、帰りはバスです。

今回初めて安倍文殊院を訪れたのですが、仏像はとても良かったです。特にご本尊の文殊菩薩は日本最大と言われていて、とても端正なお顔をしていますし、俗に言うイケメンの部類に入るのではないでしょうか。

本堂に入るときに拝観料を払うわけですが、Suicaなどの電子マネーが使えることに驚きました。観光客にとって便利というか今風というか、ずいぶん近代化されているなあ、と思うのと同時に違和感もありました。まあ、Suicaを使っておいて違和感があるなんて、都合のいい言い分だと自分で苦笑いしてしまいましたが。

文殊院の本堂

ちょうど団体客と一緒になり、簡単な説明がお坊さんからありました。ただ、本当に数分の説明でしたし、それほど丁寧なものでもなかったので、私からすると相当物足りません。説明後、ぞろぞろと文殊菩薩の方へ移動していくので、私は別の部屋から見て回りました。

干支の守り神が説明されていて、戌と亥の守り神は阿弥陀如来なのだそうです。そう言われても、はぁ、と言うしかないのですが、ふぅ~ん、と勝手に頷きながら見ていました。

文殊菩薩の前が空いたので、近くまで行ってきました。文殊菩薩も確かに大きいのですが、文殊菩薩が乗る獅子が巨大です。それほど恐ろしい顔をしているわけではないのですが、この巨大さには圧倒されます。ぎょろりとした目、筋骨隆々の足と、全体として逞しさがにじみ出ているような堂々とした獅子です。

そしてその獅子に座す文殊菩薩もまた素晴らしい。久しぶりにじっくり見つめていたくなる仏像でした。ちょうど、文殊菩薩を前にして座ることのできる椅子が用意されていたので、座らせてもらってしばし見つめていました。快慶作と書かれていたからでしょうが、なんとなく他の快慶の作品に似ているなあ、とも思います。快慶の作品って、今でも通ずるイケメンさがあるような気がします。この文殊菩薩も俗な言い方ですが、とても格好良かったです。

拝観後、抹茶と落雁を頂きました。

本堂拝観後、金閣浮御堂に行ってきました。その参拝方法が面白かったです。池の上に建つ六角形のお堂なのですが、まず「~しないように」と頭の中で唱えながら七回外側を歩いて回らないと中に入れないのです。一周するごとに、受付でもらった金色の七枚綴りの札をちぎっては賽銭箱に入れていきます。そして、七周し終わってやっと中に入ります。中は特に私の興味を覚えるようなものはなかったのですが、特別公開中の絵が飾られていました。

浮御堂

最後にもう一度本堂に戻って、文殊菩薩を拝観してきました。個人的な我が儘を言わせてもらうと、これほどの文殊菩薩は古刹の歴史あるお堂の中で見たいと思うのです。もちろん、仏像を守るためには宝蔵館や新しいお堂で保管する方がいいのでしょうが、雰囲気がなくなってしまうのが残念です。

この後は桜井の旅館までバスで戻りました。


巨大な秘仏三躰 ~吉野 金峰山寺~

當麻寺からゴトゴト電車に揺られること一時間。やっと吉野に到着しました。単線なのか、停まる駅ごとに二分、三分と停車するので時間がかかります。それがなければ一時間もかからないのではないでしょうか。

さすがに桜の季節も終わり、人はまばらでした。吉野からケーブルに乗り込んでさらに上へ登ります。三分ほどのケーブルですが、値段は360円と意外とかかる気がします。青々とした新緑の中を登っていくのは気持ちよかったですが。


ケーブルを降りてさらに登っていくと、大きな金峰山寺の山門が見えてきます。これから平成の大修理に着工するとかで、すでに下半分は工事用の網で覆われていました。仁王像は見られるようになっていましたが、やはり網で覆われてしまうとちょっと雰囲気がなくなってしまうのが残念。

さらに進み、階段を登っていった先に、ど~んと見えてくるのが金峰山寺の本堂です。東大寺の本堂は日本で一番大きな木造建築ですが、金峰山寺の本堂もそれに劣らぬほどの大きさです。あんぐりと口を開けて見上げてしまいます。東大寺にしてもこの金峰山寺にしても、よくもまあこれだけ巨大な建築物を建てたものだとただただ感心してしまいます。このような建築物を見る度に、昔の人たちの知恵、力、努力、根気に頭が下がります。

金峯山寺の本堂
金峯山寺本堂の入り口
今回はこの金峰山寺のご本尊である金剛蔵王権現三躰が特別に開帳されていたので、わざわざ吉野まで来たのです。5月6日までなので、行けるどうか微妙だったのですが、頑張って来た甲斐がありました。

拝観料をここで払います

巨大な本堂内に巨大な蔵王権現が三躰です。厨子ももちろん巨大だけれど、そこからはみ出さんばかりの巨大な蔵王権現がいます。中央がもちろん一番大きく、近くで見上げないと厨子で頭の先が隠れてしまいます。不思議なのは三躰とも真っ青な肌をしていることでしょうか。それもとても鮮やかな青です。でも違和感はありません。不思議なのですが、とても似合っていると言ったら良いのでしょうか。

無知な私は権現と明王の区別すら知らなかったのですが、今回権現とは如来や菩薩の化身だということを知りました。中央が釈迦如来、右側千手菩薩、左が弥勒菩薩の化身なのだそうです。やはり三躰とも少しずつ表情が異なり、私は弥勒菩薩が一番好きかもしれません。弥勒菩薩は未来仏といわれる菩薩なのだそうです。三躰とも怒りの形相で辺りを睨みつけていました。

建物に使われている木々も様々な種類のものがあるそうです。檜や杉はもちろんのこと、梨などの木も使われているそうです。木の種類によって硬さや性質も異なると思うのですが、それらを一つの建物にするにはやはり相当の知恵や技術が必要だったのではないでしょうか。また、三躰の権現像はすべて桜の木が使われているそうです。桜の木は神聖な木とされていたそうで、間違えて小枝でも折って火にくべようなら生涯に渡って罰が当たると言われていたとか。桜の名所の吉野に桜の木から作られた三躰の権現を祀る金峰山寺。やはり深いつながりがあるようです。

吉野では桜の新緑も楽しみにしていたのですが、結局どれが桜の木なのかあまり確認することもできずに終わってしまいました。モミジもたくさんあって新緑が綺麗でしたから、秋の紅葉の時期もすごいのかもしれません。もちろん人出もすごそうなので、わざわざここまで来ようとはちょっと思いませんが。

金峰山寺のご開帳は良かったのですが、全体的にはちょっと消化不良気味でした。頂きたかった散華がなかったり、ご朱印を書いていただいたときに、向こうのミスで別の内容を書かれてしまい、おまけだから朱印はなしね、と初めて朱印のない文字だけのページができてしまったり。まあ、別にいいのですが、ちょっと心の中で苦笑いです。

この後はまだ少し時間があるので、桜井まで戻り、様子を見て安倍文殊院に足を伸ばそうかと思っています。


青空と牡丹と藤の花 ~當麻寺~

朝から真っ青な空が広がっていました。歩いていると汗がじんわり出てくるような暑さです。

朝早く彦根を出て、一路奈良に向かいました。彦根から京都まで約一時間、京都で三日間のフリー切符を購入して近鉄特急に乗り込み、これまた約一時間で橿原神宮前に到着します。ここで乗り換えて当麻寺駅に降り立ちました。

當麻寺までは駅から徒歩15分ほど。日差しが強く、帽子を持ってこなかったのを後悔しましたが仕方がありません。當麻寺に着いたときはさすがに汗をかいていました。

今の時期は牡丹が咲いていて、奥院や中之坊では牡丹園という文字が大きく書かれていました。開門の直後に着いたので、このときはまだ静かでしたが、帰る頃には続々と団体さんが来ていました。

さて、門をくぐって最初に目に飛び込んできたのは、そよそよと風になびく藤の花でした。ここで藤の花を見られるとは思いませんでしたし、個人的に好きな花でもあるので嬉しい驚きでした。ちょうど満開のようでまさに藤色の花がたくさん咲き誇っていました。一つ残念だったのは、當麻寺の本堂をバックに藤の花を撮ろうとすると、どうしても電線が入ってしまうことです。青空と本堂をバックに見る藤の花はとっても素敵なのですが、そこに二本の電線がすっと横切っているのです。写真を撮るとき、電線ほど邪魔なものはありません。生活には必要なものですが、カメラを手にすると電線は邪魔者でしかありません。

満開の藤の花
電線がちょっと残念
奥院へ行ってみました。前回は、うまし冬・奈良というツアーで雨が降る中での散策でしたので、天気の良い日に来るのは初めてです。

牡丹は至るところに咲いていました。大輪の花はとても見応えがあります。色もピンク、赤、ボルドー、黄色、白と様々でなかなか壮観でしたが、これまた写真を撮るとなるとなかなか難しいものです。とても綺麗な花々ですが、花だけ撮っても正直あまり面白いものではありません。わざわざ當麻寺に来ているのですから、當麻寺の牡丹という絵が欲しいわけです。ただ、奥院はそのような構図はほとんどなく、思ったより写真は撮りませんでした。

牡丹と三重塔
次は當麻寺の本堂です。ここはすでに何度か訪れていますが、本堂よりもお気に入りの金堂に入るために拝観料を支払います。もちろん、本堂内でテープの説明を一通り聞いて拝観しましたが。

私のお気に入りはなんと言っても金堂の四天王でしょう。あの大陸的な面影を持つ凛々しいお顔は初めて見たときから気に入ってしまいました。髭を蓄えたどこか優しさを感じる四天王は、他の四天王のような厳つく睨みつけるような表情とはずいぶん異なります。當麻寺の四天王の中でもお気に入りなのは持国天です。この四天王に会うためにわざわざ當麻寺に来たと言っても過言ではありません。

最後は中之坊です。ここも牡丹が有名のようですが、白藤咲く、という文言に惹かれて入ってしまいました。結果的にですが、白藤はすでに満開を過ぎていて、ちょっと悲しい感じでした。でも、ここのご本尊の導き観音は、遠くからしか拝観できませんが、なかなか素敵な顔をしているので、中に入ってまあ良かったと言えるでしょうか。

中之坊の庭から見る三重塔

當麻寺から出ようとしたとき、カメラを持つ団体さんがぞろぞろと入ってきました。牡丹の撮影会でもあるのでしょうか。年配の特におじさんたちが多かったでしょうか。皆さん元気です。
私はこのあと、またもや一時間ほど電車に揺られて吉野へ向かいます。

當麻寺の本堂


2015年4月29日水曜日

人の縁 ~能登川 石馬寺~

バスで甲西駅に戻ります。予定より数分早ければ30分待つ必要もなく電車に乗れるとドキドキしながら揺られていました。そして到着予定の二分前に着き小走りにホームへ向かい、運良く電車に飛び乗ることができました。これで石馬寺にも余裕を持って行ける、と思っていたのに、です。

なんと線路に人が立ち入ったとかで琵琶湖線が20分も遅れていたのです。乗りたかったバスには到底間に合わず、次のバスだと石馬寺の拝観時間がギリギリになってしまいます。今回は諦めようかとも思ったのですが、調べてみるとタクシーで1500円ほどだとわかり、奮発して行くことにしました。せっかくですから。

能登川駅に駐車していたタクシーに乗り込み一路石馬寺へ向かいます。10分程だったでしょうか。目の前にはまたまた石段が。今日はほとんど歩いていないので、最後くらいは頑張らないと、と思いながら登り始めました。

石馬寺の参道入り口
階段途中の様子

昨日の長命寺の808段に比べれば楽なものです。それほど段差があるわけではないので、比較的楽に登れました。もちろんそれなりに息はあがりましたが。

小さな境内ですが、やはり新緑のモミジが綺麗です。が、誰もいません。案内に従って個人宅の土間に入っていくと、かわいらしい小さな男の子が出てきました。二歳くらいでしょうか。と、後ろからお母さんが出てきて、あら、とびっくり。すぐに、どうぞ、と案内されて、まずは宝物殿に。

小さいお寺ながら、宝物殿の仏像たちは大きく立派です。中央に大きな阿弥陀如来座像がどっしりと座っており、その両側には二躰の十一面観音像、持国天が二躰、増長天と多聞天がそれぞれ一躰、さらに大きな大威徳明王がこれまた大きな牛の上にどっかりと座っています。テープで流れる説明を聞きながら、ゆっくり見ることができました。十一面観音像のお顔が優しくて、なかなかいい感じで気に入りました。

本堂にも入りましたが、ご本尊は秘仏のようで拝観することはできません。

外では先ほどの男の子とお母さん、そして住職のお父さんの姿も。住職の方から、どちらから、と聞かれたので、東京です、と答えると、僕は大宮なんですよ、と言います。そこから話が始まり、なんと奥さんは私の地元のすぐ近くに住んでいただけではなく、同じ中学校に通っていたこと、さらにお兄さんは一年ほど私が通っていた時期と被っていることまで判明。さらにさらに、ご住職は私の勤め先のことまで知っていました。

なんという偶然というか人の縁というか。まさか滋賀のどちらかというとマイナーなお寺で、地元の話で盛り上がれるとは。アイスコーヒーや羊羹までご馳走になり、30分以上もお邪魔してしまいました。

ご住職のバックグラウンドも変わっています。家がお寺でもなんでもないのですが、お坊さんになりたいと思ったのだそうです。最初は親に反対されて自衛隊にも入っていたそうで、確かにがっちりとした体格をされていました。石馬寺は檀家さんが80組程しかいない小さなお寺なので、逆に一人一人を大切にする事ができて、本来の自分の目的を見失わずにやれていると思っています、という言葉が印象的でした。

あっという間に時間が過ぎていき、拝観時間も過ぎてしまいました。その間、誰も来ませんでした。秋はまた紅葉が綺麗ですからぜひ遊びに来て下さい、と言っていただき、機会があれば是非、と思いました。男の子に、バイバイされながら石馬寺をあとにしました。

一期一会。旅先での出逢いは一期一会であることが多いですが、その一つ一つは大切な思い出になります。今回も思いがけず素敵な出逢いがありました。話に夢中になって、境内の写真はほとんどないのですが。

小さな石庭ながら趣がありました

新緑と二十八部衆 ~湖南三山 常楽寺~

湖南三山の最後のお寺、常楽寺です。

バスから降りて五分ほど歩いたところにある常楽寺ですが、入り口からして少し物々しい感じを受けます。普段は拝観ができないお寺であるということ、仏像が数体盗難に合っていることを考えると仕方のないことなのかもしれません。

モミジと常楽寺

本堂に入るときも、カメラをカバンの中にしまうように、スマホやカメラを手に持たないように、といった注意書きがたくさんありますし、撮影禁止と書かれた貼り紙には「カメラが作動しています」という文言も書かれていたり、少し悲しい感じを受けます。でも、そうせざるを得ない状況に追いやったのは心無い人の行動であるわけで、仕方のないことです。

常楽寺の見所といったらやはり内陣にずらりと並ぶ二十八部衆でしょう。小ぶりな像なのですが、なかなか見応えがあります。迦楼羅や阿修羅、梵天に帝釈天、雷神や仁王像など、見ていて飽きません。誰か説明してくれるともっと興味が沸くのでしょうが、それはまた別の機会に自分で調べる必要がありそうです。ご本尊は秘仏ですが、これだけの仏像が見られるのですから物足りない感じを受けることはありません。

また、後陣には小さな十二神将も並んでいます。小降りの十二神将で、顔はもちろん厳しい表情をしていて凛々しいのですが、小降りなだけにかわいらしくもあります。二列に並んでいるので、前列から子なのか後列から子なのかわかりません。頭の上も飾り物を被っていて干支が見えないのです。多分、前列から子なのだろうと見当をつけて、自分の干支を確認します。やはり十二神将は好きです。

外に出て、三重塔を見上げました。前回は上まで登ったのですが、今回は下から見上げるだけにしました。本堂も三重塔も国宝です。そしてもちろん、青々とした柔らかなモミジが一面に広がっていました。ツツジも多くあるようでしたが、少し時期には早かったようです。

常楽寺の本堂と五重塔

三重塔を見上げます

結局、湖南三山すべてをまわってしまいました。紅葉の時期とは比べものにならないほどの静けさで、私にとっては最高の環境でした。



新緑と静けさと ~湖南三山 長寿寺~

バスの接続の関係で一時間ほどのロスをしてしまいましたが、車で動かない限りはこれもありとしておく必要があります。甲西駅から石部駅に移動し、コミュニティーバスを利用して長寿寺にやってきました。

長寿寺の参道入り口

なんと静かなことか。聞こえてくるのは鳥のさえずり、風に木の葉が揺れる音、そして職員の方が履く箒の音くらいです。こんなに静かで良いの?と不安になるほどです。天気も素晴らしく、太陽の光は強いけれど、日陰にはいると心地よい風が吹き抜けて最高です。

モミジの向こうの本堂
モミジだけではありません
長寿寺の参道は両側にモミジがあるので、やはり新緑は言うことなしです。そして、参道の途中にベンチがおいてあり、かわいらしい置物やお花があります。このお寺のおもてなしの心が表れているような感じです。フクロウや狸の親子、ウサギの置物もみんなかわいらしくて頬が緩みます。

狸の親子?
カエルの家族?
かわいい・・・

それにしても静かです。本堂の中に入ったときは誰もいませんでした。外に出ても、たまに一人、二人と見かける程度で、本当に静か。同じことを何回も言っていますが、紅葉のときとはまるで別の場所です。身も心も癒される空間です。

そして帰りがけ、なんとコーヒーが用意されていました。参道にも綺麗な紋様が描かれています。さっき聞こえてきた箒の音はこの紋様を描いている音だったのです。バスの時間があったので、ゆっくりコーヒーを満喫するまでの時間は取れませんでしたが、嬉しいおもてなしでした。

次は常楽寺です。



モミジの花とご開帳 ~湖南三山 善水寺~

今日は湖南三山の一つである善水寺と能登川からバスで行く石場寺に行く予定でした。彦根駅でふと目にしたポスターがなんと善水寺のもので、ちょうど今ご開帳をやっているとのことでした。紅葉の時期に職員の女性からこのことを聞いていたのに、ポスターを見るまですっかり忘れていました。で、そばにあったパンフレットを見てみると、このご開帳に合わせてシャトルバスまで運行しているのです。普段は湖南のコミュニティーバスを利用して、岩根というバス停から20分ほど坂を歩いて登っていく必要があるのですが、シャトルバスは本堂近くの駐車場まで行くようです。これはラッキーでした。

草津から草津線に乗り換えたのですが、祝日ということもあり試合があるのか、サッカー少年、野球青年の団体がたくさん乗り込んでいました。高校生らしい野球青年たちがいたのですが、一人がふざけていてなんと閉まった扉に後ろポケットに入れていた財布を挟まれてしまったようです。すでに電車は走り出しているわけで、みんなにお笑いされていました。次の駅が逆の扉だったらどうしよう、と焦っているようないないようなことをいいながら、こいつバカだぁ、と言われながらもみんな楽しそうでした。高校生らしいな、と微笑ましく見てました。次の駅では挟まれていた側の扉が開いて無事に財布を救出したようでした。

単線の草津線に乗り換えて甲西駅で降ります。コミュニティーバスは北口ですが、シャトルバスは南口のようです。休日とはいえやはりここも人は少ないようで、バスに乗り込んだのは私だけでした。

善水寺に開門時間より少し早めに到着しましたが、快く中に入れてくれました。ご開帳中ということで、普段より200円高い700円でした。
特別開帳のポスターと

境内に入ってまず目に飛び込んでくるのは新緑のモミジと綺麗な反りを見せる本堂です。初めて善水寺を訪れたのは昨年の紅葉の時期で、紅葉よりも先に本堂に目が行き、このお堂は好きだ、と瞬間的に思った本堂でもあります。今回もやはり本堂の佇まいがいい感じです。

善水寺の本堂
本堂とモミジ
まずは本堂の中へ。秘仏とされる薬師如来が座す厨子の扉が開かれています。七年振りだといいますから、なかなか貴重な拝観です。あまり近くまでは行けませんでしたが、しっかりと拝観してきました。そして周りを守るのは十二神将、四天王、そして梵天と帝釈天。最初、梵天と帝釈天を薬師如来の脇侍である日光・月光かと思ったのですが、よく見ると梵天、帝釈天と書かれています。なぜ日光・月光菩薩ではなく梵天と帝釈天なのか疑問に思ったのですが、聞ける人もおらず結局疑問のままです。

十二神将はずいぶん傷んでいるようです。中には玉眼を失っていたり、腕を失っていたり、頭上の干支を失っていたりするものもありますが、やはり皆凛々しいお顔をしています。

内陣の後方にある後陣には別の増長天と持国天がいるのですが、その足に踏みつけられている邪鬼がまたいい感じでした。一匹(一人?)は片肘をついて、「はいはい、もうわかりましたよ。どうにでもしてください。」と言っているようにも見えます。もう一匹も両肘をついて、「あ~もう・・・。」といった感じ。邪鬼が好き、という人も多いと聞きますが、その気持ちはわかります。四天王は基本的に厳つい顔をしていて超真面目な顔をしているのに、彼らに踏みつけられている邪鬼たちはどこかコミカルでかわいらしいのです。今回の邪鬼もちょっとふてくされたようなかわいらしさがありました。

外に出ると、雲は多いながらも青空が見え、新緑がとても綺麗に映えています。ここでもモミジの花がたくさん付いていて、頑張って撮ってみました。とても小さな花なのですが、よく見るととてもかわいらしくて綺麗な花です。今までモミジに花があることすら知らなかったので、嬉しい発見でした。

モミジの花

善水寺は湧き水も有名なようで、ペットボトルを無料で配ってくれていたので、頂いて水を入れてきました。今度ここを訪れるのはいつになるでしょうか。紅葉も素敵ですが、人が多いのがちょっと難点でしょうか。こればかりは仕方のないことですが。

この後は、急遽予定を変更して長寿寺や常楽寺にも行くことにしました。


2015年4月28日火曜日

808段の石段 ~近江八幡 長命寺~

西明寺の後は愛のりタクシーで河瀬まで行き、JRに乗り換えて近江八幡まで行き、そこからバスに乗って長命寺へ行ってきました。

何かの本で読んで知ったのだと思うのですが、あまりよく覚えていません。調べてみると、ここの参道はなんと808段もの階段を登るというではありませんか。室生寺の奥の院は400段弱です。それでも相当息があがります。長命寺はその倍以上。きついだろうなぁ、とはもちろん思いました。躊躇もしました。でも、今年は仕事柄、ちょっと足腰を鍛えておかなくてはならない事情もあり、808段で泣き言なんかいってられない!と、決意したのでした。

近江八幡から長命寺のバス停までは約25分で料金は490円でした。バス停を降りて少し行ったところ、目の前にど~んと上に延びる石段が現れます。808段としっかり書かれています。ここまで来て引き返すわけにはいきません。覚悟を決めて登り始めます。

参道の入り口
まだまだ続きます・・・
まだまだまだまだ続きます・・・疲れてぶれました・・・

ゆっくり登って行くのですがすぐに息はあがり、ゼーゼー言いながら登っていきます。もちろんあっという間に汗も噴き出してきます。それでも20分弱で登り切ることができました。

実は残り100段という辺りに駐車場があり、ここまで車で来ることが可能なのだそうです。もちろんその方が断然楽です。当たり前です。が、私は車を持っていませんし、長命寺は808段登ってお参りしましょう、と書くブログもあり、頑張ってきたわけです。ちょっとずるい気がしないでもないですが、年配の方にとってはありがたいでしょう。808段はあくまでも自己満足ですから。

長命寺の本堂は大きくてなかなか立派です。個人的に好きな檜皮葺の屋根ですし、修復工事を最近したという三重塔もなかなかいい感じでした。また808段登って来ただけあって、ここから見下ろせる琵琶湖もなかなか良かったです。湿度が高いのか少しうっすらとした感じではありましたが、ここまで登って来たのかぁ、とちょっと達成感に浸ってました。ただ、高い場所にある割にはあまり風が抜けなくて、じっとりと汗が出てきます。

高台から見下ろした長命寺全体

ここのご本尊は千手十一面観音像なのですが、遠くからガラス越しに見ることしかできないので、少し残念でした。これが普通なのかもしれませんが、近くで仏像を見ることが最近多かっただけに、ちょっと物足りない感じはします。

帰りも石段をずんずん降ってきました。明日は筋肉痛になるかもしれません。金剛輪寺でも登り、西明寺でも登り、長命寺では808段ですから。でも、登った甲斐はありました。


びわ湖を見下ろします
近江八幡らしい橋の欄干

新緑と三重塔 ~湖東三山 西明寺~

西明寺もひっそりとしていました。とにかく誰もいません。あの紅葉の時期が嘘のようです。

今回も愛のりタクシーに参道の入口で降ろしてもらいました。本堂近くまで連れて行ってもらうこともできるのですが、西明寺の参道は苔に覆われていてなかなか趣のある参道なので、ちょっと大変ではあるのですが、ゆっくり登って行くのが好きなのです。

最近の晴天続きで苔は少し潤いがなくなっている感じがしましたが、やはり濃い緑色がきれいです。そして、その上には淡い緑色の新緑が広がっていて、緑と言っても本当に様々な色があるのだと改めて思わされます。

西明寺の参道

本堂に行くと、何度かお会いしたことのある職員の年配の男性がいて、また来てくれたんだね、と嬉しそうに案内をしてくれました。ちょうどお昼を食べていたにも関わらず、すぐ終わるからちょっと待ってて、とあっという間に食べてしまいました。ゆっくり食べないと体に悪いですよ、と言うと、いやぁ~もう関係ないね、と笑います。

西明寺のご本尊も秘仏ですので目にすることはできませんが、ここでの私のお気に入りは十二神将です。初めて十二神将の説明を受けたのが西明寺だったので、思い入れもあるのだと思います。そしてその説明をしてくれたのが、このおじさんでした。やはり、覚えていてくれるというのは嬉しいものです。

驚いたのは、秘仏の薬師如来の脇侍である日光・月光菩薩がもうすぐ京都へ修復のために出張されてしまい、四年間は戻らないということ。今のうちに拝めて良かったねぇ、と言われてちょっと嬉しくなってしまいました。

そして、今回初めて三重塔の内部を拝観してきました。内部の公開は春と秋のそれぞれ一ヶ月の間なのだそうですが、天気が良くないと開けないのだとか。また、秋は人が多いのでお薦めは春の晴れた日、すなわち今日みたいな日なのだそうです。これまたラッキーです。1000円かかってしまうのでちょっと躊躇したのですが、せっかくの機会だということで奮発しました。そして、奮発した甲斐は十二分にありました。

西明寺の三重塔

内部の壁画を守るためと、荷物は外の木箱の中にしまいます。そして小さな扉を開けて中に入ったとき、思わずうわっ!と小さな声をあげてしまいました。あまりにも色鮮やかだったからです。すべてこの三重塔が建てられた700年前の状態のままなのだそうです。ここまで色鮮やかに残るものなのかと驚きました。

それほど大きくないスペースの中央には大日如来が座し、その周りには四本の柱が立ち、一本一本にそれぞれ八体の菩薩の姿が描かれています。さらに外側の柱、天井、壁にも隙間なく仏教に関わる絵が描かれていて圧巻でした。極楽鳥、牡丹、蓮、鳳凰、唐草などの装飾品や法華経を絵で説明したとされる壁画など圧倒されました。もう1人の職員の方がとても丁寧に説明してくださって、愛のりタクシーの時間さえ気にしなければ、もっとその場にいて眺めていたいと思ったほどです。

新緑のモミジは金剛輪寺の方が素晴らしかったですが、仏像や壁画などに関しては西明寺に軍配が上がります。ようするに、両寺とも甲乙付けがたいということですね。


柔らかな緑 ~湖東三山 金剛輪寺~

二週間ぶりの休みです。そしていよいよゴールデンウイークの始まりです。このゴールデンウイークをどれほど首を長くして待っていたことか。これから滋賀と奈良を満喫してきます。

まずは湖東三山のうちの二つ、金剛輪寺と西明寺を訪れました。湖東三山といえば紅葉が有名ですが、個人的には新緑の時期も同じくらい魅力的だと思っています。昨年はこの時期に秘仏のご開帳をやっていたので来たのですが、そのときの新緑の美しさが目に焼き付いていて、今年もまた訪れることにしました。そしてこの時期の良さは人がほとんどいないこと。紅葉の時期は周辺道路が大渋滞になるほどの混み具合ですが、この時期はほとんど誰もいません。

始発の新幹線に乗って、まずは米原へ。そして稲枝駅から愛のりタクシーを利用して金剛輪寺へ向かいます。普通の料金で行くと3000円以上かかりますが、愛のりタクシーだと900円。バスが走っていない場所なので、とても助かります。

金剛輪寺の駐車場に2、3台の車は停まっていましたが、参道には人影はありません。山門をくぐると目の前にはきらきらとした新緑のモミジが目に飛び込んできます。つい、うわぁ~、と声を出してしまうほどです。

言葉を失います・・・

金剛輪寺を初めて訪れたのは冬の時期で、参道の脇にずらりと並ぶ千体もの小さなお地蔵さんはどこか不気味にも感じてしまったのですが、太陽の光できらきらと輝く新緑の下で見るとかわいらしく見えてしまうのですから不思議なものです。ときどき上を見上げながらゆっくりと登りました。

参道の千体地蔵
ちょっとぶれてしまいました・・・
そして境内。ここもまた素晴らしい新緑に覆われています。紅葉の時期に真っ赤に染まっていたモミジが、今は柔らかな緑を空いっぱいに広げています。確かに紅葉の方が鮮やかさ艶やかさはあるでしょう。でも新緑はまたとても心に優しいというか目に優しい感じがします。心がホッと落ち着くような、優しさに包まれているような感覚になるのです。

ベンチに座ってしばし上を見上げていました。また吹く風の心地良いこと。今日は朝から気温が上がり、最高気温は25℃の夏日だとか。金剛輪寺の参道は石段が300メートルもある登り坂なので、さすがに登り切ると汗が噴き出してきます。その汗を引かせてくれる爽やかな風が吹いていて、そのまま寝てしまいたい、と思ってしまいました。

本堂の中にももちろん入りました。私1人しかいなかったからか、職員の女性が丁寧に説明をしてくれました。やはり静かに拝観できるのは最高ですね。とても贅沢です。

三重塔の近くにも行きました。そこから臨む新緑と本堂のコラボもまた素晴らしいのです。本当に輝く新緑のモミジは言葉を失います。癒されます。

新緑と三重塔
新緑がまぶしい
その新緑のモミジに触ってみました。とても柔らかくてほんのり冷たくて。薄い葉なのに柔らかさを感じるというのは不思議な感じがします。生命力にあふれた柔らかな新芽から少し力を頂いてきました。

次は西明寺です。





2015年4月13日月曜日

日本の色彩 ~デジタル写真の色合い~

今回京都や室生寺に足を運んで桜を観賞してきたのですが、桜を見ながら思うことがあります。

桜の季節が近づいてくると、家に送られてきたり駅の構内に置かれている旅行のパンフレットには、多くの桜を見に行こう、というツアーが載るようになります。気になったのはそこにある桜の写真。とにかく色鮮やかな写真がたくさんあって、ソメイヨシノってこんなに色が鮮やかだったっけ?と思ってしまったほどです。

同じことは紅葉の時期にもありました。とにかく色鮮やかで濃い色のもみじやカエデが一面に彩られているのです。

でもふと思うのです。これって本当の色なんだろうか、と。今回も又兵衛桜や室生寺の桜を見に行ったとき、ずいぶん色が薄いな、と思ってしまった自分がいて、この感覚っておかしい、とはたと気付いたのです。目の前にある桜の木が本物なのに、写真の色を基準にしてしまっている自分に唖然としました。

パンフレットは広告ですから、人々の目に印象強く残らなくてはなりません。今やすべてがデジタル処理でできるわけで、色合いもコントラストを強くしようと思えばいくらでもできます。ほんのり色付くソメイヨシノも、色鮮やかの紅葉も、ビビッドな色にしようと思えばできてしまいます。別にその手法が悪いと言っているわけではなくて、自分がその色を基準としてしまっていた事実にがっかりしてしまったのです。フィルムにこだわる自分が、デジタル処理をした写真と本物を見比べたとき、本物の色を「物足りない」と思ってしまったことが、正直ショックでした。

これではいけない、と思いつつもう一度風景を見直したとき、ビビッドではない色に改めて感動している自分がいました。最初にそう思ったのは昨年の紅葉の時期です。真っ赤なもみじを見て感動した後、電車に揺られているときに車窓から見えた小高い山々の淡い色の紅葉模様を目にしたときです。パンフレットで見るような鮮やかで華やかさは全くないのですが、いろいろな色に彩られている山々は本当にきれいでした。これがいいなぁ、と1人見とれていました。でも、写真ではうまく捕らえられないなぁ、とも同時に思いました。色が優しすぎるのです。腕のいいカメラマンやプロの方ならそれでもいい写真が撮れるのかもしれませんが、今の私の腕では無理です。ということで、一生懸命、脳にインプットしてきました。

桜といい山々にみる淡い紅葉といい、日本には素敵な色彩がたくさんあるんだぁ、と改めて思いました。色の名前も本当はたくさんあるのに、なかなかその違いを実感する経験がありません。万葉集などにみる、日本人の自然に対する細やかな視点や眼差しに最近勝手に感動しています。このような細やかな眼差しは心に余裕がないとなかなか難しいとも思う今日この頃です。


2015年4月12日日曜日

室生寺の桜 第2弾

雨の室生寺もしっとりとしていて良い、と言いつつも、やはり雨が降っていないときも行きたくて、結局行ってしまいました。桜の季節になってから、あまり天気に恵まれていない奈良ですが、この日は雲が多いながらもときどき太陽が顔を出し、気温も心地好い一日でした。

今回は名古屋での乗り継ぎ時間6分に初めて挑戦。この近鉄特急に乗れれば、時間を無駄にすることなく、そしてタクシーを使うこともなく、バスで室生寺まで行くことができます。新幹線はよほどのことがなければ遅れることはないだろう、という賭けのもとでの挑戦でしたが、無事に乗ることができました。

さすがに日曜日とあって人は多いながらも、それでも他の桜の名所よりは静かだと思います。私にとってはその静かさが良いので、あまり有名にはなってほしくないと、我が儘に考えてしまうのですが・・・。

桜はまだきれいに咲いていました。

五重塔と本堂
まずは奥の院へ向かいます。この前ゼーゼー言いながら登ったばかりですが、日頃の運動不足解消だと自分に叱咤しました。今回は傘をさす必要がないので、思いっきり上を見上げることができるわけで、鬱蒼と茂る杉の木を思う存分見上げてきました。まっすぐに伸びる杉の巨木は見事です。それが何百本も生えているのですから圧巻です。日中でも薄暗くひんやりしていて、杉の木の根元は色鮮やかな緑色の苔で覆われています。静かなこの山道を歩いていると、ここに神々が宿るとしか思えなくなってきます。宿らないわけがないとまで思ってしまうのです。私は一応クリスチャンなので、本当はこのような考えはいけないのでしょうが、こればかりは日本人のDNAに組み込まれているとしか言えないくらい、どうしようもありません。不思議です。

もちろん今回もゼーゼー言いながら登りました。そして登ったということで、またここでしか頂けない御朱印も頂いてきました。前回とは違う方だったので、筆跡も違いますし登った甲斐があるものです。

奥の院のあと、金堂へ行ってみると、依然いろいろと質問させて頂いた網代僧侶がいてびっくり。まあ、むこうもびっくりしていましたが。顔を覚えていてくれるというのは嬉しいものです。ここまで頻繁に訪れる人も珍しいでしょうから、逆に覚えられてしまうのかもしれません。今回、西光寺へ行こうと思っていたので、歩ける距離か聞いてみると、わざわざどこかに電話して聞いてくれました。登り坂なので大変かもしれません、としながらも、歩けなくはなさそうなので、一旦室生寺をあとにして西光寺へ行くことにしました。

道路に出て歩き始めると、なんと向こうから空車のタクシーが。これは利用しない手はありません。さっそく乗りこんで連れて行ってもらいました。確かにそれなりの坂で、20分はちょっときついかな、という感じ。素晴らしかったのは、車窓から見る室生の里の桜でした。斜面に民家が立ち、そして桜の木があちこちに植えられているのです。「里」と呼ぶのにぴったりの素敵な風景です。

そして見えてきたのが西光寺の枝垂れ桜です。まさに満開です。タクシーを降りると、枝垂れ桜の周りに咲くソメイヨシノからの花吹雪。心地好い風と共に辺り一面に桜の花びらが舞い散ります。どう形容しても、この風景を的確に表す表現力を私は持ち合わせていません。ただ言葉もなく風に吹かれていました。一応シャッターは切りましたが、あの風景を切り取ることはできていないでしょう。

西光寺の枝垂桜
花吹雪
帰りは歩きました。下りですし、室生の里をゆっくり歩きながら眺めたかったというのもありました。山間の里に桜が咲き、民家が点在する様は本当にきれいです。もちろんただ見るだけと暮らすのとでは大きな違いがあるのもわかっています。ここに暮らすか、と問われれば躊躇するでしょうし難しいだろうとも思います。それでもこのような里は大事にしたい。そう思わせる魅力的な里です。

室生の里

また、室生寺に戻りました。受付のお姉さんにも顔を覚えられていて、どうぞ、と中へ入れてくれました。お昼過ぎになってきたので、やはり人の出も多くなってきています。どうやら団体の観光バスも何台か到着しているようでした。

まず、先ほど寄らなかった本堂へ向かいました。やはり、ご本尊にご挨拶しないのは失礼でしょうから。外陣に入ってご本尊の如意輪観音を見つめていたら、職員の方に、「どうぞもっと近くに寄って、鐘を鳴らしてお参りください」と言っていただきました。せっかくなので、頭を下げさせてもらいました。ご~ん、と響く音が消えるまでの間、しばし黙想。

本堂と桜

そして金堂へ。金堂の受付のお姉さんも顔を覚えていてくれていて、快く中に入れてくれました。まあ、先ほど、「あとでまた戻ってくるかもしれません」と伝えてあったので、当たり前かもしれませんが。網代僧侶もまだいらしたので、またまた質問をさせてもらってしまいました。図々しいとは思いつつ、気になることがあるとついつい聞きたくなってしまいます。それに、網代僧侶はとても気さくな方なので聞きやすいのです。ちょっと申し訳ない気がしないでもないですが・・・。網代僧侶からは、桜を見るスポットや黄色い石楠花がすでに咲いていること、これからの特別拝観のことなどを教えていただきました。

興味深かったのは、石楠花の蕾が今年少ないの理由の一つが鹿にあるということです。鹿が石楠花の蕾を食べてしまうらしいのです。まず、鹿がそんなに多く生息しているということに驚きました。日中はほとんど目にしないそうですが、夜になるとたくさんの鹿を目撃することができるそうです。「鹿の研究者から、鹿は石楠花の蕾は食べません、と聞いていたのに参りました。」と網代僧侶は苦笑。以前は春先に生える筍の先に生えている葉だけを食べていたのに、最近は全部食べてしまうのだとか。石楠花の蕾を食べられてしまうのは室生寺にとって大きな痛手になるので、ネットを張ったりして別の山から侵入しないようにしているのだとか。いろいろと苦労があるようです。

団体の参拝客が入ってきたので、失礼することにしました。最後に弥勒堂の釈迦如来坐像に挨拶をし、網代僧侶から教えていただいた桜のスポットと黄色の石楠花を見に行くことにします。石楠花と言えばピンク、と思っていたので、黄色の石楠花があるというのは驚きでした。小さな石楠花でしたが、鹿対策なのか緑色のネットで囲まれていました。淡い黄色の石楠花でこれもまた群生していたら見応えがあるだろうなあ、と思います。

紅ヒガン桜

そういえば、網代僧侶から聞いたことですが、今年、200本ほどの新しい石楠花を植えたのだそうです。ですので、来年か再来年にはまたたくさんの蕾がつくのでは、ということでした。一年ごとに巡ってくる出会いを待つ必要があるようです。

境内の外側に、五重塔修理費寄付者御芳名がずらりと書かれています。今までは特に見向きもしなかったのですが、今回ちらりと「法輪寺」という字が見えて、視線が止まってしまいました。法輪寺も昔、雷で三重塔を焼失しています。杉の大木が倒れ、室生寺の五重塔が大きく破損したとき、法輪寺も思うところがあったのかもしれません。勝手に感動していました。

下の段の右から三番目に「法輪寺」の文字が

太鼓橋から見る室生寺の山門と桜

室生寺からバス停に向かう途中、道のわきに早咲きの石楠花がありました。きちんと石楠花を見るのはたぶんこれが初めてです。これがあと一ヶ月弱で室生寺を覆うのだと思うと、仮に花数が少なかったとしても、今からとても楽しみです。


室生口大野駅周辺も桜が多い