2015年8月13日木曜日

蝉、雷、そして静けさ ~室生寺~

やはり室生寺にかなうお寺は今のところ見つかりません。

この日は午前中に初めて信貴山朝護孫子寺に行き、午後、室生寺まで足を延ばしました。

室生寺に入る前の腹ごしらえ 中村屋の冷やしそうめん

この時期の室生寺は本当に静かです。まず人がいません。室生口大野からバスに乗ったのは私以外には1人のみ。さらには、室生寺周辺のお店がことごとく閉まっているのです。石楠花の時期にはほとんど開いていたお土産物屋や茶屋などほとんどすべてが閉まってしまっています。お昼を食べようと思っていた橋本屋まで「本日休業日」との札が出てしまっていました。昼食は抜きか・・・、と一瞬思ったのですが、隣に建つ中村屋が営業していたので、初めてそちらの冷やしそうめんを頂きました。ここまで店が開いていないと、少し不安になってしまいます。

また、室生寺に3時間ほど滞在したのですが、その間に出会う人々は本当に一握り。石楠花や紅葉の時期とは大違いです。でも、この静かな室生寺が何とも言えず魅力的です。

今回、午後に室生寺を訪れたのは、夕方の日差しに映える五重塔を見たかったからです。ところが、室生寺に到着すると雷の音が聞こえ始めました。そして太陽も雲の間に何度も隠れるようになってしまったのです。折り畳み傘は用意しているとはいえ、雷と共に来る土砂降りは避けたいものです。空の様子を見ながらの拝観となりました。

緑が映える仁王門
説明は不要ですね

金堂、本堂、五重塔、そして奥の院へ向かいます。この暑さと湿度ですから、奥の院へ到着したときには全身から汗が噴き出していました。少し息を整えてからご朱印を頂きに行きます。今回は残念ながら網代僧侶ではありませんでしたが、以前にも書いていただいたことのある方でした。前のものを見て、あ、これは私のですね、と。また、他のご朱印をも見て、これは○○さんですね、とか、これは誰が書いたかわかりますね、と楽しそうに言っていました。一般的に一冊のご朱印帳には訪れた他のお寺や神社のこ朱印を頂いていくのでしょうが、この室生寺の特別なご朱印帳は室生寺のご朱印だけを書いていただこうと思っています。それだけ室生寺が特別だということなのです。

奥の院のベンチに掛けて、しばしぼんやりとしていました。蝉の声が響きわたるほど、静けさが強調されるというか、なんとも不思議な感覚でした。鳥のさえずりも聞こえていました。蜩もないていましたし、さらには雷です。遠くに行ったかと思えば、近くでゴロゴロと大きな音が聞こえてきます。スマホで雷雲の様子を見ると、まさにこの室生寺付近に強い雨雲がかかっているようです。雨が降っていないのが不思議なくらいです。外にいるときの雷はやはり怖い部分もありますが、雨が降ったら降ったで傘をさせばいいや、と腹をくくり奥の院でゆっくりしていました。何をするでもなく、何を考えるわけでもないのですが、贅沢な時間の使い方だなぁ、と思います。

30分ほどぼーっとしていたでしょうか。ぜーぜー言いながら登った階段をゆっくり下りていきます。鬱蒼と生える杉の大木に囲まれて、昼間でも薄暗い参道です。前にも書きましたが、この杉の巨木を見ていると、神を感じずにはいられません。

可愛らしい石仏も並んでいます

金堂に再度行くと、以前に何度か話をさせていただいた方がいらっしゃって、今回も少し話をさせていただきました。ほとんど訪れる人がいないのをいいことに、いろいろ話を聞かせていただきました。この時期は静かでいいですね、と言うと、この時期と冬が静かでいいかな。個人的にはあまりたくさんの人に来て欲しくないんだよね、と笑っていました。観光目当てのお寺でもないからね、と。仏像のことも話題に上がります。仙台で特別展をやったとき、なんとなくいつもと表情が違っていて、なんか怒っているように見えたんだよね、と言います。怒っているかどうかは別として、表情が違って見えるというのは、奈良国立博物館で薬師寺の月光菩薩や聖観音菩薩を見たときに私が感じたこととまったく同じです。博物館に入ってしまうと美術品になってしまうんですよね、と言うと、そうなんだよね、と同意してくれました。もちろん、復興支援の一貫として行っているので良いことなんだけれどもね、ともおっしゃっていました。

室生寺は石楠花や桜、紅葉がなくてもとても魅力的なお寺です。雰囲気が良い。お堂の佇まいが良い。そしてなんといっても仏像が良いのです。国宝の十一面観音立像、釈迦如来坐像を始め、文殊菩薩も如輪観音も十二神将も素晴らしいのです。何度見ても飽きません。驚いたのは、お身拭いのように仏像を綺麗にすることが許されていないということです。埃はもちろん付くのでしょうが、それを払うことができないのだそうです。今は仙台から帰ってきてそれほど時間が経っていないとのことでまだ綺麗なのだそうですが、埃を払えないというのは驚きでした。

そういえば、網代僧侶は今福島の方に帰っているそうで、この日の夜、室生寺派トップの父親と一緒に戻ってくるのだそうです。山門の屋根の部分に古い仏像が最近見つかったそうで、その取り出し作業が明日行われるために、わざわざ福島から来られるのだとか。いろいろと必要な行程があるのでしょう。

あっという間に時間が過ぎていきました。次回は9月に訪れる予定です、と伝えると、ぜひまたお参りに来てください、とのこと。ありがたいお言葉です。金堂を後にして、仁王門近くの納経所で今回三つ目のご朱印を頂きます。仁王門近くで空を見上げたときに見えた風景が下の写真です。スマホのカメラなので、空が明るすぎて仁王門が真っ黒に潰れてしまっていますが、とてもすてきな空でした。青空が見えるのに、真っ黒な雲もすぐ近くに見えます。本当にいつ雨が降り始めてもおかしくない状況でしたが、不思議なことに室生寺を出るまで雨は降りませんでした。

雷雲と太陽と

バス停に行く途中に美味しいヨモギ入りの回転焼きを売っているお店があるのですが、最近はいつも買ってしまいます。もっちりした食感がたまりません。この回転焼きを食べながら、室生口大野行の最終バスを待ちました。最終バスが16時半というのはずいぶん早い気がしますが、乗り込んだのは私を含めて二人しかいませんでしたので、仕方がないことかもしれません。このバスがなければタクシーで室生寺まで来ることができなくなってしまうので、一時間に一本しかなくても大事な交通手段であることには変わりません。それに、これだけ不便だからこそ、あまり人が来なくて静かな面もあるでしょう。

バスが来る直前に少し雨がぱらつきましたが、雨に降られることなく室生寺訪問ができました。勝手に、守ってくれたのかなぁ、と考えながら奈良に向かいます。

室生寺。好きなお寺No.1になっています。法隆寺を抜かしてしまった気がします。

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