2014年11月29日土曜日

湖東三山 紅葉巡り 百済寺編

湖東三山の一つ百済寺は西明寺、金剛輪寺を巡った次の日までお預けにしていた。とにかく人は多いだろうからと、百済寺も朝一番で行こうと思っていたからだ。西明寺、金剛輪寺、百済寺と同じ日回らなくてはいけないという考えはない。ただ、ご朱印帳はきちんと三山が並ぶようにはした。

百済寺は他の二つと比べて公共の交通機関を利用して参拝するのが実は難しい。バスは走っていないし、愛のりタクシーのようなものもない。後でまた書くが、一日に4便ほど公共の交通機関で行けるチャンスはあるのだが、時間がものすごく限られてしまう。ということで、今回は行きにタクシーを利用することにした。最寄駅の八日市駅からタクシーで3330円という、私からすれば相当な出費だが、なるべく人が少ないときを選ぶとしたら、この方法しかない。

百済寺でも受付まで一気に行くのではなく、赤門と呼ばれる参道の入り口でタクシーを降りた。ここからの参道は、新緑の時期に訪れたときに初めて知り、その新緑のもみじの美しさに目を奪われたところだ。このもみじが紅葉したらどれほどのものになるかぜひ見たかった。ところが、思っていたよりも色は薄い。もともとそのような色にしかならないのか、まだ色付き始めなのかわからない。それでも十分綺麗な景観ではあるのだが、金剛輪寺のあの神々しさを見てしまうと、すべてが若干色あせて見えてしまうのは仕方がないかもしれない。人の目は贅沢だ。

百済寺の参道

途中、猿が一匹現れて少々ビビる。タクシーの運転手に、「この辺りは猿が出るから気を付けてくださいね。先日も同僚が噛まれたんですよ」との話を聞かされたばかりなのでかなりドキドキした。もともと猿は苦手なのだ。観光地によっては、野生の猿に餌をやったり、一緒に写真を撮ろうとしている人たちを見かけることもあるが、私からすればありえない。逆に「餌付けなんてしないでよ!」と言いたくなってしまう。今回は、 猿はちらりとこちらを見ただけで、さっさと行ってしまったので良かったが。

参道はもちろん本堂まで伸びているのだが、途中に立ち入り禁止の区域があり、一旦道を外れて受付に行くことになる。その途中にある駐車場にはすでに何台もの車が停まっていた。ただ、赤門から参道を歩いてくる人はあまりおらず、今回も一人とすれ違っただけだった。

受付で拝観料を払い、参道の後半部分に戻る。参道の前半は緩やかな石段なのだが、後半部分は一気に上っていく形になるのでまだ少し息が上がってしまった。境内には何人かの観光客はいたが、西明寺程ではない。もみじの数も西明寺や金剛輪寺に比べると少ない感じがするので、紅葉目当ての人たちは西明寺や金剛輪寺をメインにしているのかもしれない。それでも、あちらこちらにもみじの木があり、赤・橙・黄とここでもまた綺麗なグラデーションを作っている。

参道の向こうに本堂が見える

帰りに庭園にも寄ってみる。ここにはたくさんのもみじがあり、きれいに紅葉していた。池や小川もあるので、これはこれでいい感じである。あちこち歩き回って、いい感じの構図がないか見てみる。見たままの写真を撮ることが難しいことはわかっているのだが、やはりあちこちで何枚もシャッターを切ってしまう。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、といったところだ。

百済寺にある庭園

少しずつ人も増えてきた。一時間ほど拝観した後、次の目的地に向かうことにした。この後は、南へ下り、湖南三山巡りをする。百済寺から八日市の駅までは、ちょこっとタクシーとちょこっとバスを乗り継いでの移動を選択した。この方法だとなんと200円で済んでしまうのだ。うまく接続ができるのは一日に4便ほどなので、事前にきちんと予定を組んでおく必要があるが、あの距離を200円で移動できるのだから驚きだ。

ただ、ブログではまず、西明寺と金剛輪寺へ行った後に訪れた三井寺と石山寺について書こうと思う。


2014年11月28日金曜日

湖東三山 紅葉巡り 金剛輪寺編

金剛輪寺は予想以上にすごかった。紅葉も人混みも。

受付から続く長い石段にはは人々の列ができていたし、境内にはすでに多くの人で埋め尽くされていた。それほど広くない境内なので、人を入れないで写真を撮るとしたら、レンズを上に向けるしかない。

しかし、その人の多さを上回るほど、紅葉は素晴らしかった。まさに見渡す限りの紅葉で、赤、橙、黄、緑とグラデーションも素晴らしいし、一面がカラフルに染まりさすがの一言しか出てこない。これは人々が集まる訳だ。時期的にもちょうど良い日だったようで、あちらこちらで「きれいねぇ~」「京が一番いいかもね」と感嘆の声があがっていた。

金剛輪寺の三重塔ともみじ

もちろん、本堂にも入り、様々な仏像を拝観させてもらっただが、西明寺と同様、本堂内にも人がたくさんでどうも落ち着かない。内陣の正面に座り長居をすると、他の人たちの邪魔になってしまう気がしてどうもゆっくりできないのだ。仏像の拝観はほとんど人のいない時期に来るのがベストのなのだろう。 先ほどの参道も、初めて来たときは人が誰もおらず、周りは鬱蒼とした木々に囲まれていたため、「怖いよぉ~」とつぶやきながら上ってきた。両側にはずらりと千体地蔵とよばれる小さなお地蔵さんが並んでいるので、余計に怖かった。

境内をぶらぶらしているとき、雲が流れて太陽が顔を出した。その瞬間、まさに言葉を失った。その前から境内の紅葉は素晴らしいと思っていた。ところが、太陽が顔を出した途端、そのもみじの葉が一斉に輝きだしたのだ。これはもうどう言葉で表していいのかわからない。息をのむ、とはまさにこのことなのだとも思う。赤・橙・黄・緑の葉が太陽の光を受けて、きらきら光るのだ。とにかく素晴らしいの一言で、しばし佇んでしまった。「すごい」 そんな陳腐な言葉しか出てこないのだから情けないが、それ以外の言葉が出てこなかった。こんなにすてきな紅葉を見たのは、記憶の限りでは初めてだ。やばい、さらにまた湖東三山を気に入ってしまった。来年もたぶん来ることになりそうだ。

言葉が出ない・・・

写真も何枚も撮ってしまった。ただ、やはり肉眼で見たときの素晴らしさには及ばない。フィルムで撮った写真も後で見てみることになるのだが、露出を失敗していて、あの輝きがずいぶんくすんでしまった。スマホのカメラで撮った写真でもやはり適正ではない気がする。これはもう仕方がないことだと思う。目に焼き付けておくしかない。三重塔のもみじ、頭上を埋め尽くすもみじ、本当に素晴らしいものを見せてもらった。


赤と黄色のもみじが素晴らしすぎる・・・

この光景を一人で静かに観賞する、なんてわがまますぎるのだろう。でもあえて言わせてもらえば、やはり静かに紅葉に呑みこまれたい、という思いはある。まあ、不可能なことなのはわかっているので、戯言として書いておくことにする。

この後は、三山の最後、百済寺には向かわず、大津の三井寺と石山寺に向かう。百済寺も人がすごそうなので、こちらは明日の朝一で訪れる予定を立てている。連続にこだわる必要はないので、まずは一度湖東三山から離れて、大津周辺の二つのお寺に向かう。

駅までタクシーで行ったのだが、まずそのタクシーが全く来なかった。途中、タクシー会社から送れる旨の連絡が入るほどだった。30分近く遅れて到着するが、タクシーに乗り込んで合点がいった。車の列が先ほどよりさらに伸び、国道まで車がびっしりとつながっているのだ。これではバスやタクシーが一般車を抜かそうにも抜かせない。さらに、運転手の話によると、西明寺からもずっと渋滞が続いているという。三連休中ということもあり、様々な場所のナンバープレートをつけた車がびっしりと道路を埋めていた。こちらもまたびっくりである。









2014年11月27日木曜日

湖東三山 紅葉巡り 西明寺編

楽しみにしていた湖東三山の紅葉巡り。思いっきり紅葉に埋もれてきた。

人でごった返すのはわかっていた。春に西明寺の職員の方から聞いていたし、何度か湖東三山を訪れたという叔父からも聞いていた。だからこそ平日に行こうと思っていた。少なくとも休日よりは若干でも人は少ないことを期待していたからだ。ところが唯一の平日の天気予報が雨。いくら雨の日の紅葉も趣があってよい、と言われても、やはりできれば太陽の下での、青い空の下での紅葉を見たい。そう思って、急遽予定を変えて、休日の湖東三山巡りとなった。

まずは西明寺だ。とにかく開門と同時に到着しようと、ホテルを七時過ぎには出て、近江鉄道の尼子駅から愛のりタクシーに乗った。今までも西明寺に行くときは愛のりタクシーを利用しているのだが、今回初めて本当に相乗りになった。さすが一年で一番観光客が訪れる時期である。

西明寺には開門前に到着したにも関わらず、すでに何人もの観光客(今回はあえて参拝客ではなく観光客と書かせてもらう)がいて、さすがにびっくりである。それでもまだ、人が多いという感じではなく、それなりに紅葉を静かに観賞することができた。最初のうちは・・・。

今回、惣門から歩いていくことにした。タクシーだと、もっと先にある受付まで行くことができるのだが、この惣門から受付までの参道の雰囲気が気に入っていて、そこを歩いて参拝したかった。苔生した参道脇と色づく紅葉のコントラストがまた素晴らしい。あとで「そうか」と思うことなのだが、まだそれほど人のいない朝早くに来ることはいいのだが、三山というだけあって日の出が遅いのだ。もちろん太陽は出ているのだが、西明寺の境内に光がさすまでは相当時間がかかる。ということで、参道を歩いているときはまだ、日の光が当たっていない状態だった。

それでも紅葉の素晴らしさはなかなかのものである。紅葉に見とれて歩くと、足元がおぼつかなくなるので気を付けないといけないのだが、やはりついつい顔を上げて紅葉に見とれてしまう。

そして本堂に到着した。あまり人が増える前に一通りの写真を撮ってから、本堂内に入った。前回特別公開されていたご本尊はすでに厨子の中で、扉は固く閉じられている。秘仏であるから仕方がないのだが、やはりいつかまたお目にかかりたい。十二神将や他の仏像も見応えがあるので、ご本尊が見られなくてもここまで来る甲斐は十分にあるとは思うが。
西明寺の三重塔

内陣の後方にある部屋で、前回も懐中電灯で釈迦三尊像の顔を照らしてくれたお兄さんがいた。覚えているはずがないと思いつつ、また照らしてくれるように頼んでみると、「ご開帳の時に来られましたか?」と聞かれて驚いた。覚えてくれていたのだ。「なんとなく見かけた顔だと思いました」と。同じ年にそう何度も訪れる人もいないだろうから覚えてくれていたのだろうが、やはり嬉しい。さっそく、三尊像の顔を照らしてもらった。光によって表情が変わるこの三体。意外とお気に入りである。前回と同じように、「照らしてみますか?」と聞かれたのだが、これまた前回と同じように遠慮した。人に照らさせておいてなんだが、どうも仏像の顔を懐中電灯で照らす、というのは少々気が引ける。

外に出てみると、観光客がぞくぞくと到着していた。あっという間に境内は人でいっぱいになっている。それでもまだ、太陽は鬱蒼と茂った木々の影に隠れて顔を出してくれない。家族連れも団体客も、様々な人々が続々と境内に到着してくる。難しいな、と思う。なるべく人が少ないときに、と頑張って朝早く来ると、紅葉がキラキラ輝くために必要な太陽が昇りきっていない。でも、太陽が昇りきるころにはすでに境内は人々でごった返すことになる。
右手が本堂

少し太陽がちらちらと姿を見せるようになった頃、タクシーに乗る時間になってしまった。次は金剛輪寺だ。タクシーは西明寺に来るときに一緒になった男性に、さらに男性二人が加わり、タクシーの中は満席になってしまった。そして、金剛輪寺へ向かう道の途中、車が停まってしまった。どうやら駐車場が満杯で、その駐車場へ入るための車がずらりと並んでしまっているようなのだ。参ったな、と思っていると、道路の交通整理をしている人が、タクシーは前に進んでください!!と叫びながら走ってきた。上にいる係の人と無線でやり取りをしながら、バスやタクシーなどは優先的に登らせてくれるようだ。どうやら、金剛輪寺の状況はすごそうだ。

2014年11月26日水曜日

長谷寺~紅葉~そして聖林寺

室生寺の次は長谷寺だ。

長谷寺は境内の敷地面積も広く、建物も仏像も大きい。そしてその分、参拝客の人数も多い。

長谷寺駅からまずは階段を一気に下り、川沿いを歩くこと15分。長谷寺に到着する。そして、本堂へ行くためにまた階段を上る。一気に下って結局はまた上ることになるので少し辛いものはあるが、長谷寺の階段は段差がほとんどないようなものなので、室生寺ほどゼーゼーするとはない。ただ、段差がほとんどないからこそ、意外と歩き辛い。

長谷寺の本堂は大きい。斜面に建てられていることもあり、ここも舞台が大きく突き出している。ここから見る五重塔がとてもいい感じだ。

本堂から見る紅葉と五重塔

長谷寺でも特別公開が行われていて、本尊の大きな十一面観音像の間近まで行くことができ、さらには御足を触ることができるという。ただそのための料金がなんと千円もする。人によっては安いと感じるのかもしれないが、長谷寺の十一面観音像にそれほど惚れ込んでいないので、わざわざ千円を払ってまで近づきたいとは思えない。外からでも十分拝観する事ができるので、特別公開は遠慮した。

紅葉の時期ということもあり、やはり前回よりも参拝客の数は多い。今回、白装束を身に着けた団体客もおり、ご本尊の前で全員でお経を唱えていた。

近くに小さなお堂があり、愛染明王を奉っていると書かれていたので、少し覗いてみた。西大寺の愛染明王程ではないが小さいながらもいい顔をしている。明王は苦手だと思っていたのだが、愛染明王は割と好きらしい。最後に五重塔へ行ってみる。

紅葉もきれいに色付いているのだが、撮影スポットとなると意外と難しい。紅葉はきれいだが五重塔がうまく入らなかったり、五重塔はいい感じだがもみじが紅葉していなかったり。それでも、何枚か頑張って撮ってみた。

五重塔ともみじ
全体的な色のグラデーションも素晴らしい
そういえば今日は、わらしべ長者物語の日のようで、長谷寺駅から長谷寺に向かう途中、いくつかの家々がわらしべ長者の物語の様々な場面が描かれた暖簾を軒下に吊るしていた。わらしべ長者の物語は良く知ってはいるものの、見るのは久しぶりだったので一軒一軒の暖簾を見ながら歩いた。なかなかすてきな絵と簡単なあらすじが書かれた小さな看板のようなものがあり、見ながら読みながら歩くのが楽しくなる。

この後は聖林寺へ向かうが残念ながら写真は一枚もない。もちろん写真撮影が禁止なこともあるが、聖林寺は小さなお寺であり、お寺として写真に撮るところが 残念ながらあまりない。だからどうしても写真がない。それでも、十一面観音はやはり見応えがあった。今回、訪れたときちょうど団体客とバッティングしてし まい、最初はざわざわした中での鑑賞となってしまったのだが、10分ほど待つと誰もいなくなってしまった。団体向けに説明のテープが流れていて、それはそれで勉強にはなるのだが、やはりこのような観音様は静かにゆっくり鑑賞したい。

やはりすてきな観音様だ。 指先のしなやかさが良い。柔らかく優しく包み込むような指先をしている。顔の剥落もなければずいぶん印象は今と異なるのだと思う。どうしても剥落した部分に目が行ってしまい、顔に傷を持つ感じになってしまうので、もともとの顔がなかなかイメージしにくい。それでもやはり、写真で見るよりはずっといい。

誰もいないこと良いことに、ずーっと見つめていた。好きな仏像はしっかり頭に残る。聖林寺のこの十一面観音像はその一つだ。今回も最初に団体客がいたことで、期待していたほどの時間を取ることができなかった。行きはタクシーと奮発したのだが、帰りはバスの時間を調べていたため、そのバスにの遅れるとまずい。この後は先のブログにも書いたように、室生寺に戻りライトアップを観賞した。

2014年11月19日水曜日

室生寺と紅葉~そしてライトアップ

最近、毎週のように奈良詣でをしている。今回は、室生寺、長谷寺、聖林寺と巡ってきた。

紅葉の時期ということもあり、参拝客も多いのではないかと思ったこともあり、室生寺には開門と同時に着くようにした。ということで、今回は日帰りではなく、前日に鈴鹿で一泊をして、朝早く室生口大野に到着。

天気予報はそれほど悪くなかったのだが、室生口大野に到着したときは、一面雲に覆われていて太陽はまったく顔を見せてくれない。この時間はバスもまだ走っていないので、贅沢にもタクシーを使った。2500円ほどかかるので、安くはないが仕方がない。

今回は紅葉と同時に、金堂の内陣も特別に入れるということで、こちらも楽しみだった。仙台で室生寺展を見て、十一面観音や釈迦如来などは拝観させてもらっていたが、やはりお堂の中で拝観したい。

到着したときは、すでに一、二組の参拝客がいたが、まだまだしんとしている。お寺の職員の方々が階段やお堂の前の縁側を掃除していた。紅葉が一番綺麗だったのは本堂の前だ。まだ最盛期ではなかったが、最盛期ではないからこそのグラデーションがとても綺麗だ。

室生寺の本堂ともみじ   


本堂を別の角度から

 室生寺の五重塔 
 
今回も頑張って奥の院まで上ってみる。なかなかの階段で、ゆっくりゆっくり上っているつもりなのに、途中で息が上がってくる。途中、奥の院までの階段を掃きながら上がっていく職員の方に挨拶をした。ゼーゼー言いながら到着した奥の院。残念ながらまだ開いておらず、ご朱印を頂くことができなかった。先ほどの職員の方が到着し、建物を開け始めたので、この人が書いてくれる人なのだろう。ただ、待つほどのことでもないな、と思い下ってしまった。

金堂の仏像を拝観するために、外陣に入らせて頂く。しっかり400円の拝観料を取られるが、十二神将の小さなクリアファイルを頂けるのは、とても良心的だと思う。外陣に座らせてもらい、十二神将、十一面観音、薬師如来、釈迦如来などを拝観させていただく。室生寺展では仏像を360°見ることができて、それはそれでなかなかない機会なので仙台まで行った甲斐はあったが、やはりお堂に佇む姿が一番似合う気がする。他の参拝客の邪魔にならないように、少しずれた位置に座ってぼんやり仏像を見つめていた。

この後、一旦室生寺を後にして、長谷寺と聖林寺とを巡り、午後4時半くらいにまた室生寺に戻ってきた。再度入山料を払わないといけないと思っていたのだが、午前中に受付の方にチケットの裏に日付の印を押しておきますから、出入り自由ですよ、と言って頂いた。これもまたとても良心的。

ライトアップは午後5時からということで、着いたときは職員の方がたくさんある石段の一つ一つに蝋燭を置いていた。これをライトアップの期間毎日やっているのだという。大変な作業だとおもうのだが、5時前にはすべての蝋燭に火が灯されていた。

5時まで、本堂前のベンチに座って本堂を眺めていた。少しずつ人も増えてきているが、思ったよりは少なくいい感じである。お寺によっては三脚を禁止しているところもあるのだが、ここは大丈夫なようで、思い思いの場所に三脚を立てて、5時になるのを待っている人も数人いた。辺りが暗くなっていくのと同時に、気温もぐんぐん下がっていく。あっという間に吐く息が白くなってしまった。手袋やマフラーを持ってきて正解である。

そして5時。パッとライトが付く。夜の中に紅葉が綺麗に現れる。派手さはないが、室生寺らしい綺麗なライトアップだ。皆、一斉に写真を撮り始める。それほど人が多くないので、お互いに邪魔にならないようにしているのが良かった。私は三脚を持っていないので、柵や灯籠を利用させてもらいながら、カメラを固定して何枚か撮らせてもらった。

ライトアップ時の本堂

五重塔もライトアップされていて素敵だ。五重塔の手前には石段があり、両側には蝋燭が灯されていて、幻想的な雰囲気を醸し出している。ここもまた多くのカメラマンがシャッターを押しまくっていたが、ほとぼりが冷めたところで階段を上らせてもらい、近くからも写真を数枚撮ることができた。

ライトアップ時の五重塔
 
訪れる人が意外に少ないな、と思ったのだが、実は室生寺がライトアップを始めたのは昨年なのだそうだ。ということは、まだそれほど知名度も高くないのだろう。これから毎年行われていく中で、少しずつ人気が出てくるのだろうか。それはそれで室生寺にとっては良いことなのだろうが、私からするとあまりうれしくない。まあ、自分勝手な思いだとは重々承知なのだが。

帰りのバスから見る道はまったくの闇だった。バスのライトが消えてしまったら、まさに何も見えなくなってしまうのではないだろうか。室生寺の周りの小さな集落を過ぎてしまうと、室生口大野駅に近くなるまで、ほとんど光がない。バスの一番前に乗っていたので、余計にそれを感じてしまった。

室生寺。お気に入りのお寺の一つである。
 
参道を蝋燭が灯す
職員の方々の努力の結晶

「星と祭」 井上靖

井上靖氏著の「星と祭」を読んだ。


前回、海住山寺を訪れたときにお会いしたご婦人たちが、この本を読んで滋賀県の湖北にある十一面観音巡りをした、と聞いたからだ。職場の図書館で探してみたのだが置いていなかったので注文してもらうと、在庫もなく入荷する予定もないと言われたという。ところが、別の図書館から借りることができ、なんとか読むことができた。借りた文庫本も年期が入っていて、とても古さを感じさせる。アマゾンでのレビューも悪くないのになぜないのだろう? それほど古いということか。


観音巡りばかりの話ではないが、びわ湖を中心にして話が進む。詳しい内容を書くことは差し控えるが、読み終わり、私も湖北の観音巡りをしたくなったのは事実。特に主人公が観音像に対し、拝むわけでもなく、願い事をするわけでもない。それなのに惹かれるというようなことを言っており、ものすごく共感してしまった。湖北の観音様たちは基本的にお寺を持っていない。


地元の人たちが大事に守ってきたからこそ、今も多くの観音様たちが湖北にいらっしゃるのだそうだ。そんな観音様たちに会いに行こうと思った。交通の便も良くないようだし、予約をしないと見られないところがほとんどのようだが、海住山寺でお会いしたご婦人たちも絶賛していた観音様たちだ。


そのとき私は拝むのだろうか?

2014年11月15日土曜日

鳥獣戯画特別展 第二弾

海住山寺に行った後、一気にまた京都まで戻り、国立博物館に向かった。

もちろん目的は、鳥獣戯画特別展の第二弾だ。11月5日から四巻すべてにおいて別の場面が展示されるということで、もし機会があれば行きたいものだとは思っていた。ただ、鳥獣戯画展だけのために京都まで行くのは少々きついものがあって、どうしようかと迷っていた。で、海住山寺である。海住山寺に行く、ということで、午後を国立博物館に行こうと決めたわけだ。

12時過ぎに国立博物館に着いたのだが、あまりの人の多さにまずは驚いた。前回は屋外30分、屋内20分の待ち時間だったのに、今回は屋外120分、屋内50分と表示されているのだ。甲巻を見るだけのために3時間近くも待たなくてはならない。さすがに躊躇したが、せっかく京都まで来ているのである。ここまで来てみない訳にもいかない。ただ、なんとなくこのお昼前後が一番混んでいるような感じがしたので、まずは博物館に併設されたカフェで昼食をとることにした。

びっくりの待ち時間

もちろん、このカフェも席待ちの人たちが列を作っていたが、思っていたよりも早く席に案内してもらうことができた。屋内は満席だったので、テラス席になったが、気候がちょうどいい感じで、外で食べるのにちょうどよい気温でもあった。40分ほどそこでゆっくりした後、意を決して列に並ぶことにした。

その頃にはなんとか屋外の待ち時間が90分と若干減っていた。それでもずらりと人が並んでいる。秋とはいえ、この日の日差しはとても強く、クロマーで頭や顔を隠しながら待ち続ける。定期的に動くので、辛すぎることはなかったが、やはり長い。文庫本を持っていたので、それを読んで時間を潰していた。

しっかり90分後、やっと博物館内に入ることができた。今回は初めてイヤホンガイドを借りてみる。どうせ甲巻を見るために並ぶことになるのだし、前回すでに壁に貼られている説明文などはすべて三回以上読んでしまっている。ということで、イヤホンガイドを聞きながら時間を潰そうと思ったのだ。

甲巻が展示されている部屋はやはり長蛇の列ができていた。ただ、外に表示されているような50分という待ち時間ではなく、20分ほどで甲巻にたどり着いた気がする。係のお兄さんが、「立ち止まらないでください。前の人と間隔を開けずにお進みください」とひっきりなしに連呼するので、否が応でも前に進まざるを得ない。これだけの人が並んでいるのだから仕方がないとは思うが、せっかくなのだから静かに見たいと心の中で愚痴ってしまう。

今回の場面は、甲巻の中でも有名な箇所で、カエルとウサギが相撲をしていたり、ウサギが猿を追いかけている場面などが生き生きと描かれていた。前回の場面の好きだったが、今回の場面はまさに鳥獣戯画としてよく見かける場面だったので、やはり本物を見ることができたということで、自然と笑みがこぼれる。まあ、ゆっくりじっくり見ることができないのは残念ではあったが。

次の部屋は乙巻だが、ここもそれなりの列ができていた。前回は列などほとんどできていなかったので、今回の場面の方が人気があるということなのだろうか。想像上の麒麟、ヒョウ、象などが描かれていて、こちらもまた興味深い。ただ、この後の丙、丁巻は飛ばしてしまった。あまり人物画などに興味がないせいか、甲・乙巻の動物たちの方が興味深いのだ。

今回はせっかくなので、乙巻を見た後もう一度甲巻の部屋に戻って列に並びなおした。30分くらいでまた甲巻とご対面することができ、二回目の見学を行う。もちろん、このときもあのお兄さんたちの声にせかされてしまうのだが、それでもなるべくゆっくり見させてもらった。ウサギとカエルがメインなのだが、猿や猫の姿も見ることができて、本当に面白い。できればゆっくり見てみたい。彼らの表情や動きをもう少しゆっくりじっくり見てみたい。そんな思いを持ちながら、今回の鳥獣戯画展を後にした。

屋外に展示されていた甲巻の場面の一部

今回は高山寺の収蔵品はほとんど見ることなく、甲巻・乙巻に終始してしまった。ショップで絵葉書を数枚購入して外に出る。

時間には余裕があったので、京へのいざない、という展示も見に行くことにした。さすが国立博物館というべきか、国宝や重要文化財がずらりと並んでいる。彫刻、金工、染織などの分野によって部屋が分かれていたのだが、彫刻しかあまり興味のない私は彫刻以外の部屋をほとんど見ることなく終えてしまった。

彫刻の部屋も見応えはあったのだが、実は意外と印象に残っていない。人が多くて説明文をゆっくり読むことができなかったこともあるだろうし、様々なお寺から出張してきている仏像が並んでいたので、どれがどのお寺の仏像なのかしっかり把握することができず、記憶にもしっかり残らなかったのかもしれない。やはりお寺、お寺の雰囲気、そして仏像がすべて気に入ったところは記憶にもしっかり残りやすい。法隆寺、薬師寺、海住山寺などはお気に入りのトップ5には入っているだろう。ということで、すごいなぁ、と思いつつも、国立博物館の仏像の記憶がほとんどない、という申し訳ないような結果になってしまった。


2014年11月13日木曜日

海住山寺と紅葉

またまた弾丸での日帰り京都(@^▽^@)

今回の目的は二つ。一つ目は気に入った海住山寺の紅葉を見ることだった。

先日、特別開帳の期間に行ったばかりなのに、またまた海住山寺に足を運んでしまった。始発の新幹線に飛び乗ってまずは京都へ。少しでも早く海住山寺に着きたくて、乗り換え時間4分も走って出発間際のJR奈良線に飛び乗る。さらに木津では乗り換え時間は2分。 この乗り換えがうまくいかないと40分ほどロスすることになってしまうのだから大きい。おかげで加茂駅には9時過ぎには到着することができた。

タクシー乗り場に行くと、一台はちょうど出発してしまっていたが、もう一台がロータリーに入ってくるところだった。これを逃すとまたもや20分ほど待たされることになるため、今回は運が良かった。あのヘアピンカーブを一気に上って9時半前には海住山寺の境内に到着していた。

しかし。

境内の中はしんと静まり返っていて、人がいる気配がまったくない。HPでは9時に開門ということなので、この時間であれば開いているはずなのだがまったく人気がない。本堂の扉も閉まっていて中には入れそうにない。それでも境内には入ることができたし、一番好きな五重塔は均整のとれたすてきな姿を見せてくれているので困ることはない。

今回の中で一番のお気に入り

紅葉の方だが少しまだ早かったようだ。もみじの多くはこれからまさに赤くなろうとしているところでのようだ。でも、この色の変化の様子がまた素敵だった。天気予報で気にしていた空模様も真っ青な晴天に恵まれ、太陽の光を浴びて色付いてきた葉がキラキラ光っていた。色の変化の真っ最中のもみじはオレンジ色に輝いていて、それはそれで見とれてしまう。真っ赤に色付いたもみじもあり、ある意味いろいろな色のもみじを見ることができたので、少し早い感はあったけれど、これはこれで十分でもあった。

色付き始めたもみじと

太陽の光に透かして撮ってみたり、五重塔をバックに撮ってみたり、あっという間にフィルムを一本使い切ってしまう。デジタルであれば気にせずバシバシ撮るのだろうが、あえてのフィルムカメラである。枚数を気にしながらも露出を変えてみたりして何枚か撮ってみる。そして、このブログ用にスマホのカメラでも撮っておく。

五重塔の周りを行ったり来たりして、より良い構図がないか探しながら撮っていると、砂利石を踏みしめる音がかすかに聞こえてきた。やっと誰かが到着したようだ。しかし、どうやら参拝客の一人のようで、相変わらずお寺の関係者らしき人は誰もいない。開帳後間もない時期なので、そんなに参拝する人もいないと思っているのだろうか。

10時を過ぎたころ、やっとお寺の関係者の方が見えて、本堂の扉を開けてくれた。あのすてきな十一面観音像や四天王像はすでにいなくなってしまった後だったが、それでもせっかくなので中を拝観させていただいた。「一昨日まで特別公開中だったんですけどねぇ」と残念そうに受付の方が言ったので、「実はその期間中に来ているんです。今回は紅葉を見たくて」と答えると、驚きつつも嬉しそうに「そうでしたか」とにっこり笑ってくれた。「五重塔が好きなので」と付け加えると、「そうですよね、期間中は赤白の幕が張られていたから、五重塔としては今の方がいいですよね」と答えてくれた。

それにしても本当に静か。結局、最後までほとんど人が来ることなく、2,3組の参拝客が訪れていたくらいだった。浄瑠璃寺はこの紅葉の時期、ものすごい人出になると聞いているのだが、紅葉の最盛期にはここ海住山寺もたくさんの参拝客で埋まるのだろうか。今回の状況を見る限りでは、あまりそのようになる気配がない。交通の便もかかわっているのかもしれない。それでも、個人的にはこの海住山寺がとても気に入っている。やはり塔好きはこの五重塔の均整のとれたすてきな姿に惚れてしまっているのかも。そして、紅葉の十分満喫することができた。もう少し遅くすれば、もっと鮮やかなもみじや黄色のイチョウなども見られるようだが、それはまた来年に持ち越しだ。


帰りは歩いて一気に下り、集落近くのバス停で、コミュニティバスに乗り込み加茂駅まで戻る。タクシーだと約1200円、コミュニティバスだと200円。あの坂がなければ行きもコミュニティバスにしたいところだが、まあこれくらいの贅沢は許されるだろう。

この後はまた一気に京都まで戻り、鳥獣戯画展の第二弾を見に行く。
 

2014年11月11日火曜日

本を読むスピード

趣味の一つに読書がある。


ただ、毎回買っていると置き場所に困るので、仕事場の図書館を頻繁に利用している。暇さえあれば読みあさる時期があるかと思えば、パタリと読むのをやめてしまう時期もあったりして、我ながら波があるなとは思いつつ、最近は読みあさる時期に入っている。


半年ほど前は図書館にあった東野圭吾の本をほとんど読んでしまった。次に手をつけたのは図書館戦争シリーズで有名になった有川佑。さらに話題の池井戸潤。そして、NHKでドラマ化された裏同心シリーズも一気に読み終えた。裏同心シリーズくらいであれば、一日、二日あれば読み終えていた。


ところが。


先日、井上靖の「天平の甍」を読んだ時だった。薄い文庫本なのに、全然進まないのだ。面白くないからではない。漢字の量や文体の違いで、ゆっくり読まされていた。正直驚いた。文体でここまでスピードが落ちるものなのか。


天平の甍は鑑真和上が渡日するまでの話で、日本の遣唐使と共に留学僧として中国にわたった普照という僧侶を中心に話が進んでいく。まず恥ずかしながら、「併し」や「嘗て」が読めなかった。さらに、登場人物の名前が「普照」や「栄叡」である。他にも様々な耳慣れない名前や地名が出てくる。ゆっくり読まないと、あっという間にわからなくなっていた。


このような本もあったのだと改めて思い起こさせられたのと同時に、読みやすい本ばかり読むのもあまり良くないな、とも思った。無理に難しい本を読む必要はないかもしれないが、そればかりだと物足りなくなってくる。今回久しぶりに真剣にゆっくり読まされる本を手にとって、さらに読書の奥深さを知った気がしている。


今、読んでいるのは、同じく井上靖の敦煌。これが終わったら「星と祭」を読む予定だ。結局、この辺りも奈良巡り、仏像巡りに絡んできている。当然の成り行きなのかもしれない。


2014年11月3日月曜日

奈良 秋の特別開帳 第二弾 続き

法起寺からバスに乗り、奈良へ向かう。その途中から、雨が降り始めた。最初はポツポツと小降りだったのだが、奈良に近づいてくるにしたがって土砂降りになってしまった。外を歩くのが嫌になるほどの土砂降りだ。参ったなぁ、と思いつつ外を見る。折りたたみ傘は持ってきているが、この後の予定を組み直す必要があるかもしれない、と考える。ところが局地的だったようで、お昼を食べようと思っていたJR奈良駅に着く頃には、雨は小康状態になりつつあった。

まずはJR奈良駅近くの「奈良うまいもんプラザ」に併設する小さなレストランに入る。前回、ここの夕食が野菜たっぷりでとても美味しかったので、お昼も食べてみようと思ったのだ。

お昼時は一回だけだが奈良で取れた野菜のバイキングができる。時間が遅かったので、予定していたメニューはすでに売り切れていたが、サラダバイキングは問題ない。おひたしからポテトサラダまで、6種類くらいの野菜料理が並んでいてどれもとっても美味。ご飯も奈良県産のお米ヒノヒカリが美味しくて、つい五キロを買って宅配で送ってしまった(^_^;)

腹ごしらえをして外に出ると、すでに雨は上がっている。良かった。これから、県立美術館で催されている大古事記展と前回惚れた正了知大将像を見に行くことにする。

その大古事記展だが、残念ながら私の興味関心とは合わないようだ。古事記の様々な場面が絵に画かれていたり、説明があったりするのだがどうもダメで、あっという間に通り過ぎてしまう。まあ、古事記展なのだから仏像とかお寺関連のものがあるはずもなく、私にとっての面白いものがなかったのだ。ショップで購入したのも古事記とはまったく関係のない仏像のカレンダー。西大寺の愛禅明王や法隆寺の百済観音が載っており、つい衝動買いをしてしまった。

気を取り直して興福寺の東金堂後方へ向かう。さすがに前回より参拝者の数は多かったが、ゆっくり時間をかけて見る人はあまりいないようで、思ったより静かにゆっくり見学することができた。
今回気づいたのは、槍のようなものを持つ多聞天の手だ。とても温かみのある手で、まるで本物のように見えてしまった。手ねぇ、と我ながらマニアックだと思い苦笑してしまう。相変わらず背中はセクシー。

ここの四天王は大きくて迫力があるのだが、踏みつけられている邪鬼の存在感もなかなかのものである。特に増長天に踏みつけられている邪鬼は右足をにゅっと突き出していて、思わず触りたくなってしまう。広目天に踏みつけられている邪鬼は目をギョロリとさせていて、目が合うとまるで本当に見られていると思ってしまうほどだ。

時間に余裕があったこともあり、ゆっくり何度も見て回る。正了知大将像は相変わらず凛々しい。若々しくもある。でも、正了知大将をネットで調べてみても、この興福寺の情報しか得られず、英語表記ならわかるかもしれないと、受付の方に聞いてみた。すると、なんと外国人の僧侶を紹介してくれたのだ。たまたま近くにいたこともあったが、外国人の僧侶とは驚きである。それもとっても日本語が上手。

早速聞いてみるが、正了知大将は日本特有の神様のようで、英語でも同じ「セイリョウチタイショウ」になってしまうのだそうだ。それにしても流暢な日本語を話す。つい、海外で仏教を学んだのですか?と質問をしてしまった。アメリカで仏教を学んで日本に来たのですが今はこの通りです、と頭を撫でながらにっこり。きっと私や一般の日本人よりはるかに仏教についての知識はあるのだろう。もっといろいろ聞いてみたかったが、さすがにそれはやめておいた。

そろそろ駅に戻る時間だ。特別開帳、はまってしまいそうだ。
興福寺の五重塔
興福寺の東金堂と五重塔

奈良 秋の特別開帳 第二弾

11月1日~3日の3日間のみ、法隆寺の上御堂が特別に開かれるという。ということで、またもや新幹線に飛び乗ってしまった。先日奈良に滞在したばかりだというのに、また弾丸日帰りの奈良である。

朝は四時起き、新幹線は始発。近鉄線とバスを乗り継いで、法隆寺前に到着したのは10時少し前だ。日曜日ということもあってか、法隆寺にはすでにたくさんの参拝者たちが訪れている。

南大門をくぐると正面に金堂と五重塔が奥に見える。法隆寺は私にとって、寺巡り仏像巡りの原点だと勝手に思っている。だからなのか、五重塔の姿がみえると、いつの間にか頬が緩む。今日は1日曇りで雨の可能性もある予報だったので、青空に映える五重塔、というわけにはいかなかったが、それでもやはりこの五重塔には存在感がある。

まずはその五重塔と金堂、そして講堂がある西伽藍へ。すでに何度も訪れている場所なので、最初に上御堂へ向かった。普段は閉まっている講堂の裏側の扉が開いていて、上御堂へ続く参道がある。参道といってもたいした距離ではなくすぐ後ろといった方が正しいかもしれない。階段をあがっていくとすぐに上御堂だ。

お堂の中で御朱印を頂く。法隆寺の御朱印はとても品が良い。もちろん、どのお寺で書いていただく御朱印も素晴らしいものばかりだと思うのだが、この法隆寺で頂く御朱印は特に丁寧で品があるように感じるのは、単純に贔屓目で見ているからだろうか。

上御堂には釈迦如来を中心に、右手に文殊菩薩、左手に普賢菩薩が安置されている。こちらも、もちろん国宝で飛鳥時代の作品だそうだ。四隅には四天王も立っている。こちらは色彩が割合とはっきり残っていて、顔の色もよくわかる。三尊像と同じ年代だとすれば、これだけ色が残っているのは珍しいのではないだろうか。

西伽藍に戻り、金堂内の釈迦三尊像を拝観する。こちらもすでに何回も見させてもらっているのだが、必ず寄るようにしている。アルカイックスマイルと呼ばれる独特の笑みを浮かべた仏像は、見れば見るほど味が出てくる気がするのだが、これもまた贔屓目のせいかもしれない。今回、四隅を守る四天王の中で、広目天が見あたらなかった。聞いてみると、現在東京の国立博物館へ出張中なのだそうだ。少し前は、毘沙門天と吉祥天が出張中だったし、なかなか全員が一同に介すというのは難しいのだろうか。

法隆寺の暖簾(?)
西伽藍を出て、御朱印を頂くために隣にある聖霊院に寄る。今回は夢違観音の名前を書いて頂いた。個人的にとても気に入っている仏像が宝物殿にある九面観音なので、九面観音の名前も書いていただけるのかと聞いてみると、それはちょっと書けないですねぇ、と言われた。でも他にたくさん書けるものはあるんですよ、と言われたので、どんなものが書けるんですか、と聞くと、例えば如来シリーズとかね、と言う。如来シリーズ? まさか如来にシリーズがつくとは、と思わず笑ってしまった。ご本尊の釈迦如来とか阿弥陀如来とかいろいろあるでしよ、と言う。そういえば、聖徳太子の言葉「以和為貴」や救世観音、百済観音などを今まで書いて頂いてきたが、本尊の如来は書いて頂いたことがない。では次回にぜひ、と伝えると、たくさんありますからたくさん来て下さい、と力強く言われてしまった。聖霊院を出ながら、次はいつ来るんだっけ、と考えてみる。冬に訪れる予定を組んでいたはずだ。そのときはご本尊をお願いしよう。

次に向かったのは法輪寺だ。その前に宝物殿や夢殿、中宮寺も見てきたが、ここも何回も見ているのでメインの場所だけさらっとまわる。

今回、法輪寺でも特別開帳をやっているとのことで、こちらも楽しみにしていた。法輪寺の講堂の裏手にある妙見堂が開かれているのだ。ここについては、前回訪れたときに初めて知ったことで、開帳される時期は不定期だということもあり、なかなか機会がないと思っていた。ところが今回、幸運にも開帳の時期に訪れることができたのだ。

法輪寺の三重塔

ちいさなお堂の中には、妙見菩薩と脇侍が安置されている。興味深いのは天井を埋め尽くす様々な天体にまつわる絵だ。妙見というのは北極星を現すといい、四天王や月の周期の二十八にまつわる神々など、たくさんの絵が正方形の板に描かれており、天井にはめ込まれている。天体曼陀羅と呼ばれているそうだ。

天井なので、一生懸命見ていると首がとっても疲れてくる。本当は寝っ転がって天井を眺めていたいのだが、さすがに仏様の御前である。無理だ。ミャンマーのパゴダだったら問題ないのにな、と涅槃佛の周りで寝ているミャンマーの人たちのことを思い出す。

講堂の御朱印を書いて下さる方に、妙見菩薩の御朱印があるのか聞いてみると、あまり大きい声では言っていないんですがありますよ、とにっこり。聞いてみるものである。なかなか見ることのできない仏像の御朱印を頂けるのはさらに特別な気がして、書いていただいている間つい笑みがこぼれてしまった。

法輪寺の暖簾(?)

バスの時間があったので、残念ではあったが、法起寺には寄らなかった。コスモスもまだたくさん咲いていて、写真も撮りたかったのだが、天気もあまり良くないし、バスも逃すと一時間待つ羽目になるので断念した。来年の楽しみが残るのだから良しとしよう。

このあとは、奈良に戻る。