2015年10月14日水曜日

東海の仏像たち⑥ ~御嵩 願興寺 リベンジ~

三連休の最終日は、名古屋に戻り名古屋周辺のお寺に行こうと思っていたのですが、どうも気がのりません。朝からどうしようかと迷っていたのですが、やはりもう一度願興寺へ行きたいと思ってしまったのです。ダメもとで電話をしてみると、10時くらいであれば大丈夫でしょう、とのお返事を頂きました。もちろん、移動中にまた何か起こることはあるかもしれません。それでもどうしても行きたくなって、8時半過ぎにホテルをチェックアウトし名鉄線に乗り込みました。

御嵩までは名古屋を経由していく方法と岐阜を経由していく方法があるのですが、今回はどうせ名古屋に戻ることになるので岐阜を経由していくことにしました。名鉄一宮から岐阜へ向かう電車はあまり人が乗っていません。逆に名古屋方面へ向かう電車のホームにはたくさんの人が待っていました。同じ県庁所在地なのに、名古屋と岐阜ではずいぶん人の流れが異なるようです。

名鉄線に揺られて犬山、新可児で乗り換え、またもやとってもローカルな広見線に乗って御嵩へ向かいます。この日は朝から青空が広がる良い天気で、御嵩駅周辺もどこか明るい雰囲気になっていました。

願興寺へ向かい、奥の家の方まで行ってみると、家の扉が開いています。これは住職の方が在宅、ということだろう、と少しホッとしてしまいました。入り口近くに行くと、年配の女性が植物に水をやっているところでした。この方が住職のようです。声をかけると、「本堂の前で待っていてください。今行きますね」とにこやかに言ってくださいました。
ご住職のご自宅へ続く鐘楼
願興寺本堂
そして前回は泣く泣く諦めざるを得なかった収蔵庫を開けてもらい、中に入れさせていただきました。中に入って驚きました。堂々とした仏像たちがずらりと並んでいるのです。これはすごい、と思いました。ご本尊の薬師如来は秘仏ということで拝観は叶いませんが、両脇の日光・月光菩薩、その周りに十二神将、さらには四天王、そして左右には阿弥陀如来立像、阿弥陀如来坐像、釈迦三尊像とまさに圧巻です。すべて重要文化財に指定されていているのですが、手を伸ばせば触れてしまうほどの間近でこれらの仏像たちを見ることができます。特に驚いたのは四天王の大きさです。2メートル以上はあるのではないでしょうか。大きな動きこそはありませんが、堂々とした風格を持ち、周りを睨み付けています。刻まれた文様も、うっすらと残る文様も素晴らしいの一言です。

そんな仏像たちを拝観する前に、住職の方がお経を唱えてくださいました。お経のことなどまったく分からない私ですが、とても耳に心地よいリズムで心が落ち着く感じがします。リズムの取り方が人によって、宗派によって異なると聞いたことがありますが、ここ願興寺の住職の方のお経のリズムはとても聞きやすく耳に優しい感じがしました。

仏像を拝観しながらいろいろな話も聞かせていただきました。これだけの重要文化財があるのですが、お寺としては財政的に非常に厳しいのだそうです。本堂は確かに痛みがとても激しく、あと5~10年も放置すれば、屋根から水が漏れてくるかもしれないと言われているそうです。ただ、本堂の修復にはなんと10億円もかかると言われているようですが、檀家が一桁のこのお寺にそんな力はあるはずもありません。国の補助金、県や町の補助金を受けたとしても、お寺として2000万円を集めなければいけないといいます。そのために、いろいろと工夫されているそうですが、簡単なことではないことは容易に想像がつきます。

ふるさと納税で寄付ができるという話を聞いたとき、これは利用してもいいかもしれないと思いました。ふるさと納税、という言葉は知っていましたが、その仕組みとかよくわかりませんでしたし、自分には関係のないことだと思っていました。ところが、このふるさと納税の仕組みを利用すると、実質2000円でこの願興寺の修復のための寄付が3万円分できるというのです。帰ったら早速調べてみようと思います。

あっという間に1時間が過ぎてしまいました。お忙しい中、時間を割いていただいて本当に感謝です。そして何より、あきらめないで戻ってきて良かったと、心から思える訪問でした。なんとか頑張って修復に取り組むことができればと願っています。


2015年10月13日火曜日

東海の仏像たち⑤ ~揖斐川 横蔵寺~



横蔵バス停時刻表

谷汲山から一本早いバスに乗り込み横蔵寺へ向かいます。谷汲山までは数人の乗客がいたのですが、ほとんどが谷汲山で降りてしまいました。唯一残っていた乗客一人も途中で降りてしまい、結局横蔵寺まではまたまた一人となってしまいました。

横蔵寺は華厳寺に比べると境内もこぢんまりとしているようで、訪問者もあまりいないようです。それでも駐車場には数台の車が停まっていましたし、拝観中は3,4組の方々が来ていました。


横蔵寺の入り口




横蔵寺境内図
まずはバス停からすぐ脇を流れる小川にかかる赤い橋を渡ります。鬱蒼と茂る森の中で、この朱色の橋はとてもインパクトがあります。小さいのですが、色がとても鮮やかです。また、ここでも大きな白い幟が立っていました。



本堂へ向かう朱色の橋

赤い橋を渡り階段を上っていくと仁王門があります。ただ、仁王像は瑠璃殿という宝物殿に移されているので、仁王像が立っているべき場所には何もありませんでした。

仁王門をくぐると正面に本堂、そして右手に三重塔があります。特に国宝でも重要文化財でもないようですが、なかなかすらりとした均整のとれた塔です。調べてみたところ、県の文化財として登録されているようでした。周りにはこれまたモミジの木がたくさんありましたので、紅葉と三重塔のコントラストもまた素晴らしいのでしょう。

仁王門前

本堂
三重塔

本堂は中は少し覗けるものの、ここのご本尊も秘仏ということで拝観することはできません。ただ、瑠璃殿には見応えのある仏像たちがずらりと並んでいました。本堂から左手に坂を一旦下って、小さな道を渡り少し登ったところに瑠璃殿と舎利堂があります。この瑠璃殿にはまさに私が見たかった仏像たちがいるのです。

他の観光客たちは先に舎利堂へ行ったようで、最初の頃は私しか瑠璃殿にはいませんでした。中に入ると、係りの年配の女性がいて300円の拝観料を支払います。ごゆっくりどうぞ、と言われ少し照明を落とした室内に入ります。

素晴らしい仏像が並んでいます

ご本尊が薬師如来ですから、やはりずらりと並ぶのは十二神将、日光・月光菩薩、四天王です。四天王はなぜか多聞天だけ他の三体とはずいぶん異なる顔つきをしていました。他の三体はきりりとしたイケメンで周りを睨み付けているのですが、多聞天はまったく威嚇しているようには見えずのんびりとした顔つきをしています。不思議です。

ここで一番インパクトがあるのが深沙大将でしょう。私も初めて見る像です。ふんどし一枚のみを着け、そのふんどしからおへその辺りになぜか顔が彫られていています。とても不思議な姿です。両腕と両足には蛇が巻き付き、右手を振り上げて相手を威嚇しているポーズを取っているのですが、どうも恐ろしさや威厳があるようには見えないのです。三蔵法師の沙悟浄がモデルだとか言う話もあるようですが、よくわかりません。日本に数体しかないそうです。

そしてミイラです。舎利堂に安置されているのですが、ここ横蔵寺はミイラがあるお寺としても有名なのだそうです。個人的にはまったく興味がないのですが、一応見ておきました。思っていたよりも小さいのですが、やはりどこか不気味です。あまり正視することもできずものの数秒で通り過ぎてしまいました。

ここのモミジは確かに素晴らしそうです。その分、訪れる人も多そうですが、もし機会があれば紅葉の時期も来てみたい気がします。奈良が好きすぎるので、いつになるのかはまったく予測がつきませんが。

帰りのバスも順調でした。やはり仏像が素晴らしいと、来た甲斐があったなと心も満たされます。このあと、時間があったので途中の大垣で水郷巡りをしたのですが、これはまったく興味がわかず、残念ながら足が疲れただけの散歩になってしまいました。残念・・・。それでも、今日は素晴らしい仏像たちに会うことができたので十分満足です。

これから赤に染まっていくのでしょう
緑のモミジもすてきです


2015年10月12日月曜日

東海の仏像たち④ ~谷汲山 華厳寺~

朝から青空が広がる中、2日目の仏像巡りがスタートです。尾張一宮からJRで岐阜経由でまずは大垣へ向かいます。ここからまたもやとてもロールな電車、揖斐川鉄道に乗り換えて終点の揖斐へ向かいます。揖斐川鉄道は残念ながらICカードは使えず、久しぶりに現金での切符購入です。
三両編成だったのですが、大垣で乗り込んだのは4人。終点の揖斐まで行ったのは私ともう一人のおじさんのみ。これで採算が取れるのかと心配になりましたが、大垣駅へ向かう電車にはそこそこの乗客がいました。

揖斐からはコミュニティバスを利用して谷汲山まで行きます。このコミュニティバスの本数が少なくて、華厳寺と横蔵寺へどう行くか、どう回ってくるかを考えるのが大変でした。なにせバス停からお寺までの所要時間、拝観に要する時間などが全くわからなかったので、どれくらいの余裕を持って次のバスを考えれば良いのかわからなかったからです。

揖斐駅

まず揖斐から谷汲山までのコミュニティバスですが、またもや利用したのは最初から最後まで私一人でした。それも30分近く乗っていたのに料金は200円という破格の値段です。周りの景色を見ながら、そしてときどきうとうとしながらバスに揺られていきました。

コミュニティバス
谷汲山バス停の時刻表
谷汲山のバス停に到着すると、マイカーで訪れている人たちがちらほらいるようです。華厳寺も横蔵寺も紅葉で有名らしく、紅葉時期になると人々でごった返すようですが、連休中とはいえこの時期は人出が少ないようです。バス停から華厳寺までは徒歩10分とのことで、プラプラと歩いて少し傾斜のある参道を歩き始めました。

参道の両側には食堂や仏具店、そして地元の物産品を扱うお店などが並んでいます。観光地のような「ザ・土産物!」というお店はなく、のどかな雰囲気の参道です。紅葉で有名というだけあって、モミジもたくさん植わっていました。そんな参道を歩いていくと、華厳寺の仁王門が見えてきます。

仁王門にはもちろん仁王像が立っていて、訪れる人たちににらみをきかせていますが、思ったよりも小柄だったが逆に印象的でした。仁王門をくぐるとさらに参道は続きますが、ここからは左右にいくつかのお堂を見ることができます。ただ、具体的な説明等はありませんしよくわかりません。よくわからないので、ただただまっすぐ参道を歩いて本堂へ向かいます。

華厳寺の仁王門
一つのお堂へ向かう道
本堂へは階段を上ることになります。写真でもわかるように、両側に大きな白い幟がいくつも立っているのが印象的でした。あまりこのような幟を見たことがないのですが、これもまた場所によって変わってくるのでしょうか。階段を上りきったところに本堂があります。それなりに立派な本堂なのですが、なぜかあまりしっくりきませんでした。

ここのご本尊は秘仏のようで、残念ながら拝観することができませんでした。仏像巡り、と銘打っているだけに仏像が拝観できないと、そのお寺への興味が一気になくなってきてしまいます。本当はそれではいけないのでしょうが、秘仏の意味がどうしても分からないのです。それでもせっかくなのでご朱印を頂きにいきます。ここのご朱印は過去・現在・未来を司る三枚のご朱印を書いてくれます。が、三枚セットというのがあまりしっくりきません。ご朱印をお願いすると自動的に三枚となり金額も900円になる訳で、言い方が悪いですが金儲け?と思ってしまうのです。それに、担当する方は無表情でたんたんと事務作業をこなしているような感じがしてしまい、ますます評価はマイナスです。残念ながら華厳寺は私の心にはヒットしませんでした。
この先に本堂があります
本堂
魚?
思っていたよりもあっという間に拝観が終わってしまいました。本当は11:07発の横倉行のバスに乗る予定にしていたのですが、拝観が終わったのは10時少し前。バス停から歩いてきたのを含めて30分ほどで拝観を終了してしまったことになります。どうしようかと思ったのですが、もう一度バスの時刻表を確認してみると、10:26にも横倉行があることがわかりました。これを逃す手はありません。時間を気にしつつバス停まで戻ることにしました。

参道の両側に建ち並ぶ店先には、下の写真のようなかわいらしいオーナメントがたくさん置いてありました。竹もいいですし、その節を利用してかわいらしいミミズクの人形を置いていて、ついつい写真を撮ってしまいました。この辺りは柿の名産地でもあるらしく、多くの店で柿を扱っていました。また、地元のおばちゃんたちが楽しそうにおしゃべりをしながら、干し柿を作るべく柿を吊るしていたのも印象的でした。余裕があれば買ってみたかったのですが、荷物にもなりますし重いということもあり断念しました。こういう時は、車だと便利だろうなあ、とつい思ってしまいます。

無事にバスに乗り込み、次の目的地横蔵寺へ向かいます。
多くの店先に飾られていました

東海の仏像たち③ ~岐阜の美江寺観音 尾張一宮の禅林寺~

御嵩を後にして向かったのは岐阜駅です。ここからバスで15分ほどのところにある美江寺観音に向かったのですが、ここのご本尊は秘仏らしく残念ながら拝観できず、お前立ちの観音様を遠くから拝観できる程度で、わざわざバスに乗って来るほどのところでも・・・、と思ってしまいました。人形供養を行う場所でもあるようなのですが、人形が苦手な私にとってはなんの魅力にもなりません。すごすごと岐阜駅まで引き返してきました。
そして宿泊先がある尾張一宮に向かいます。ここからバスで15分ほどのところにある禅林寺の仏像は予約が必要とのことでしたが、電話してみると「良いですよ」、とのこと。急いでバスに乗って向かいました。

禅林寺の入り口

この禅林寺もまた現代のお寺で、お寺の建物に歴史を感じることはありません。誰もいないので、本堂を覗いてみましたが、やはり人気はありません。仕方がないので電話をしてみると、隣の民家の呼び鈴をならして欲しいとのこと。恐る恐る呼び鈴をならしてみると、年配の女性が出てきてくれました。

本堂の左側にある小さな収蔵庫を開けてくれます。中には入らないで欲しいとのことでしたので、薄暗い部屋の中に安置されている仏像たちに目を凝らします。電気は付けてくれたのですが、やはり薄暗さはそれほど解消されません。ただ、写真撮影はOKとのことで、何枚か撮らせていただきました。

薬師如来



安置されているのは、薬師如来、日光・月光菩薩、そして十二神将です。私の好きな配置な訳ですが、外の光が当たる薬師如来はそれなりに拝観することはできましたが、十二神将に至っては暗すぎて表情はほとんどわかりませんでした。薬師如来の持つ薬壺がめずらしく青色で、あまり色のない仏像たちの中でひときわ目立っていたのが印象的でした。

私が拝観している間ずっと女性の方は待っているわけで、どうしても気になってしまいゆっくり拝観することが憚られてしまいます。気にせず拝観することができる人もいるのでしょうが、私はどうしてもだめなのです。それでもがんばってじっくり拝観させていただきました。欲を言えば、もう少し明るい中で拝観したかったのですが、仕方がないでしょう。お礼を言って禅林寺を後にしました。

ということで、初日の仏像巡りは終了です。残念ながら不完全燃焼気味です。
薬師如来の右に座す月光菩薩
日光菩薩と十二神将六体


2015年10月11日日曜日

東海の仏像たち② ~愚渓寺~

一旦、願興寺を後にして向かったのが愚渓寺です。最初はその存在すら知らなかったのですが、願興寺を調べ、願興寺がある御嵩町を調べているときに、その存在を知ったのでした。ここは禅寺なのでしょうか。枯山水の石庭があるとのことで、なんと京都龍安寺の石庭の原型になったとも言われているとのことなのです。これは行くしかないでしょう。

場所は願興寺から歩いて10分程で、中学校の裏手にあります。ここのお寺は最近立て替えられたのか、随分新しく見えますが、やはり人影がありません。門は開いているのでキョロキョロしながらなかに入ってみると、視線の先に一人の僧侶を見かけたので、自由に散策して構わないのですか、と訪ねると、どうぞどうぞ、というのでお礼を言ってさらに中に入ってみました。

愚渓寺前
この道を行った左側に門が
そして目にしたのが石庭です。それほど広いわけではありませんが、立派な石庭です。配置されていた石は確か三つだったかと思いますが、白い砂利石は綺麗な紋様を描いていました。龍安寺の原型だと言われればなるほどと思えますし、違うと言われてもそうか、と思ってしまいそうですが、いい感じの石庭ではありました。

石庭の後方には小さいながらも緑豊かな和の庭園があり、それが白の石庭といい感じでマッチしていました。

そしてこのあとまた、願興寺に戻ったのでした。


愚渓寺の石庭
奥の庭もいい感じ
龍安寺の石庭を彷彿させるだろうか?

東海の仏像たち① ~御嵩 願興寺~

東海地方の仏像巡りは初めてです。東海の美仏という本を買い、いつもとは異なる場所の仏像巡りをしてみようと思ったのでした。

大変だったのは、広範囲に広がっていることと開帳期間が限定されているお寺が多いこと。そして要予約とされているお寺が多いことです。開帳期間が合わないのは仕方がないとしても、電話予約が必要な場所はなかなかハードルが高い場所です。さらに、自分が拝観したいと思えるような場所でないと意味がありません。地図を見、交通機関の確認をしながらなんとかいくつかのお寺をピックアップしました。

初日、名古屋からJRや名鉄線をを乗り継いでまず向かったのは、岐阜県の御嵩駅近くにある願興寺というお寺です。ここは予約制でしたが、仏像がなかなかいい感じであり、ぜひとも行きたいと思ったお寺のひとつです。それがあんなことになろうとは、このときは思いもしませんでした。

この日は朝から小雨がぱらつく日でしたが、名古屋に到着した頃から空は少しずつ明るくなってきました。まず名古屋から名鉄線に乗って新可児まで揺られ、新可児で乗り換えて終点の御嵩まで行きます。御嵩駅ではICカードを通す改札がないので、新可児でICカードを窓口に提示すると、そこで御嵩までの運賃が引き落とされ、乗車証明書というレシートが渡されます。なかなか面白い制度ですが、ローカル線ならではといった感じです。そしてそのレシートは御嵩駅に到着する少し前に、電車内で車掌さんに回収されました。
乗車証明書?

御嵩駅です。本当に小さな駅で、駅員もいません。駅員室かと思った部屋は御嵩の案内所でした。その案内所の前を素通りして外に出ても、ひっそりとした道が通っているだけです。お店も小さな販売所があるだけで、時間を潰せるような場所はなさそうです。御嵩は中山道の途中の宿場町だったようですが、時代の波にのまれ、今はひっそりとした町になっているのかもしれません。
御嵩駅前
御嵩駅から周りを見渡す
願興寺はこの御嵩駅から目と鼻の先にあります。約束の10時でしたが、境内はひっそりとしていて人の気配がありません。門をくぐって目に飛び込んできたのは、なかなか立派な本堂です。ですが、痛みがひどいことは一目瞭然でした。屋根の鉄板には多くのサビがあり、柱や板も随分と痛んできています。このような小さな町でこれだけのものを維持していくのは大変なのでしょう。

願興寺本堂

まずは、ご用の方は本堂の裏手にあります建物へと書かれた貼り紙を頼りに、裏手に回ってみます。庭の奥に民家がありましたので、恐る恐る呼び鈴を鳴らしたのですが誰も出てきません。仕方なく電話をしてみたのですが、これもまた誰も出ません。どこかに出かけているのもしれない、と先にもう一つの訪問場所である愚渓寺へ行くことにしました。

住職の自宅へ向かう道

その愚渓寺から11時少し前に戻ってきたのですが、やはり人影はありません。再度電話をしてみると、今度は年配の女性の方が電話口に出ました。「やった!」と思いつつ、拝観の予約をした者なのですが、と伝えると、申し訳なさそうに、今住職は出かけていて拝観はできないと言うのです。話によると、数少ない檀家の方が突然亡くなられて、急遽お葬式が入ってしまったのだと言います。これは残念ですが仕方がありません。誰が悪いわけでもありませんし、こればかりはどうしようもないことです。どちらから来られたんですか、と聞かれたので、東京からです、と答えると、ますます恐縮されてしまいました。もちろんとてもとても残念ではありまし、正直がっかりしてしまいましたが、またの機会がありましたら、と努めて明るくお伝えして電話を切りました。正直、ちょっと泣きそうでもありました。この願興寺の仏像たちに会うだけのためにわざわざ一時間半近くもかけて来たのですから、落ち込まないわけはありません。それでも、今回は縁がなかったということだろう、と自分に言い聞かせて御嵩を後にしたのでした。