2015年5月24日日曜日

青空の上海

先日、出張で上海へ行ってきました。今年で確か4回目になる上海です。初めてのときは、頑張って地下鉄を乗り継ぎ観光地にも行ってみたのですが、ここ2年は観光らしきことは何もしていません。上海はビジネスの街らしく、観光地といってもショッピングとかになってしまうので、あまり興味がわかないのもありますが。


到着したのは夕方で、先ほどまで雨が降っていたようで、空はどんより曇っていました。まあ、上海といえばPM2.5でも有名になってしまっていて、晴れていてもガスがかかっているような空模様が多い場所です。ところが今回初めて三日目に綺麗な青空が広がりました。上海でもこんな青空が見られるんだ、と失礼ながら思ったほどです。天気も意外と快適で、風も心地よく日陰であれば気持ちのよい天気でした。

上海初日

高速道路はまだ空いていました

仕事はまあ順調というか無事にこなしてきた感じです。

せっかく上海にいたのですが、ホテルについていた朝食以外はすべて和食。日本からのビジネスマン御用達のホテルに宿泊していたので、周りはほとんどすべて日本食のレストランばかり。中に入れば、「いらっしゃいませぇ~」と声がかかり、メニューも日本語、注文も日本語、お支払も日本語です。楽と言えば楽ですが、不思議な感じがします。日本で忙殺されていたので、とにかく時間がある時はゆっくりしようと思っていたので、あまり外出もせず近場で過ごしてしまいました。

ホテルの近くには小さなローソンもありました。便利店とはコンビニということなのでしょう。漢字での表記はなかなか興味深いものがたくさんあります。ペットボトル売場では、お~いお茶も売っています。烏龍茶も売っていますが、気をつけないと甘い烏龍茶を飲むことになります。以前、台湾で歩き疲れてコンビニで冷たい烏龍茶を買って飲んだのですが、甘くて驚いたことがあります。緑茶に砂糖や蜂蜜、牛乳などが入っている物はタイで経験済みだったのですが、さすがに烏龍茶はないだろう、と思ったのです。ところがこれが甘かった。飲んでさっぱりしたかったのに、口の中が甘くなってしまい、残念な感じになってしまったのでした。ですので、今回はペットボトルの表示をきちんと見るようにしました。良く見ると、無糖・微糖・加糖と三種類もあります。もちろん無糖を買いました。

無事に仕事も終わり、浦東空港へ向かうタクシーの中のことです。ふと運転手を見ると、なんとなく落ち着かない感じなのです。見ていると、自分のももを叩いたり、頬をぺしぺし叩いたりしています。まさか、と思い、鏡に映る運転手の目元を見ると、完全に眠気と戦っている様子。さすがに焦りました。空港への途中で交通事故なんてシャレになりません。頼むから頑張ってくれ!と心の中で叫んでいました。日本であれば、運転手に話しかけるなどできるのですが、中国語はまったくできません。話しかけることもできず、ただただしっかりしてくれ!と心の中で叫ぶのみ。運転手もまずいと思っているのか、水を飲んだり、腕を伸ばしたりしてはいますが、どう見ても目は眠たそうです。

頼むよ・・・、とハラハラしているときでした。携帯に電話がかかってきたのです。空港まであと15キロほどのところでした。普段であれば、運転しながら携帯で話してて大丈夫なのかい、と突っ込みを入れたくなりますが、今回はほっとしました。電話で話しながら寝てしまうということはまずないからです。今回だけは、もっともっと話してて!と願っていました。その願いが届いたのか、ずいぶん長いこと話し込んでいました。そして電話が終わった数分後に無事に空港に到着したのです。

無事に到着したので良かったですが、これほど心配しながらタクシーに乗ったのは初めてです。この後は飛行機もすべて順調で、無事に日本に戻ってきました。


こんな素敵な青空は初めてです!

2015年5月12日火曜日

鳥獣戯画展 ~東京国立博物館バージョン~

京都国立博物館で鳥獣戯画展をわざわざ二回も見に行ったのに、まさかの東京国立博物館での開催です。前半と後半で展示内容を変えるというのは同じです。東京には来ないものと思っていたのですが、さすがは首都です。

すでに見に行っていますから、どうしようか迷ったのですが、せっかく年間パスポートを持っているのだからと行ってきました。

今日は台風が近づいているとのことで、いつもより出足は少ないのではという淡い期待を抱いていたのですが、現実はそれほど甘くはないです。ただ、閉館直前の方が若干待ち時間は少ないようなので、午後4時少し前に到着するようにしてみました。

東京国立博物館正面
平成館へ向かいます
この判断は良かったようで、平成館への入場は10分ほどの待ち時間で済みました。長いときは入場までに90分というときもあるようですから、そういう意味でもさすがは首都です。
京都へ見に行ったときは、とにかく鳥獣戯画でも一番有名な甲巻を見る、というのが目標だったので、他の展示はほとんど見ていませんでした。ですので、今回はわざわざ説明が聞ける録音ガイドまでレンタルしての見学にしました。

結論から言うと、甲巻の見学までは結局120分待ちという膨大な待ち時間になってしまったので、諦めることにしてしまいました。さすがに120分待ちを耐えるだけの忍耐は持ち合わせていませんでした。京都で一度見ている、ということもあり、そこまで頑張る気にならなかったのです。

それでも行った甲斐はありました。今回の展示で個人的に興味深かったのは、甲巻の断簡です。甲巻から切り取られた断簡が4幅、他の巻からのものが1幅が展示されていたのですが、この断簡もなかなかのもので個人的にはこれが一番良かったです。1幅は国外の個人が所蔵しているということで、久しぶりの里帰りなのだそうです。個人で所有しているというのも驚きですが、海外ということにも驚きでした。どのような経緯でその人の手に渡ったのか気になるところです。

その断簡の1幅には、鶴、亀、アヒルなども描かれていてとても可愛らしいですし、鹿に乗っていた猿が振り落とされて、その猿をウサギや他の猿が介抱している場面など、甲巻らしい場面があり、なかなか見応えがあります。甲巻そのものを見なかった分、こちらの断簡はじっくり見させてもらいました。もちろん、この断簡にも人だかりはできていましたが、さすがに列になるほどではありませんでした。

他の高山寺にまつわる様々な至宝は、思ったより見応えがありました。仏像などの彫像が好きなので、普段は仏画などにはまったく興味がないのですが、録音ガイドを借りたお陰で、興味深く見学することができた気がします。曼陀羅や十二神将や四天王の図など、意外と興味深いものがありました。

録音ガイドを聞きながら見て回ると、やはり「なるほど」と思わされることがだくさんあります。知らなければ気付きもせずに通り過ぎてしまうような些細なことも、ガイドを聞いていると細かく確認し始めるので、なかなか面白いのです。彫像と呼ばれるものはほとんどなく、ほとんどが仏画や仏教に関係のある絵ばかりでしたので、録音ガイドがなければあっという間に見終わってしまっていたかもしれません。

一時間ほど滞在して外に出ました。やはり風が強かったですが雨は降っていませんでした。上野公園ですから、やはりここも新緑がたくさん目に飛び込んできます。昨年までの葉と色が異なるので、新緑の部分がなんとなくモフモフしているように見えて、その中にバフッと飛び込んでみたくなります。実際には硬くてチクチクするのでしょうけれど、遠目に見ると本当に柔らかそうで緑色の雲のようにも見えてきます。強風にあおられながらも、「癒される色だなぁ~」と思いながら上野公園を後にしました。

平成館前の噴水で遊ぶ鳥獣戯画の動物たち

2015年5月3日日曜日

京都は苦手かな ~大徳寺と国立博物館~

大徳寺近くにある割と気に入っているレストランでお昼を食べました。サラダと小さなおかずが四種類、そして雑穀米とスープというランチセットで、行く度におかずが変わります。野菜もたくさんとれるので、個人的に気に入っています。カードが使えないのがちょっと残念ですが。

大徳寺は結局、特別公開中の黄梅院しか行きませんでした。大徳寺にあるすべての塔頭を回ると、それだけで3000円以上かかってしまうのです。もうすでに何度か訪れていますし、さすがに旅の後半でこの値段はきつかったので、特別公開中の中でも石庭がなかなか落ち着いて風情のある黄梅院へ行ってみました。

庭にも石庭にも大きな岩が置いてあるのですが、庭の方の大きな岩は不動明王を表していて、その両側にある小ぶりの岩は不動明王の脇侍である 矜羯羅童子と制多迦童子を表しているのだとか。また、石庭の二つの岩は聖至観音ともう一人の観音様(名前を忘れてしまいました)を表しているのだとか。

唯一撮影可能な黄梅院の小さな庭
入口近くの庭のみ撮影可
龍安寺を始め、大徳寺や妙心寺などの塔頭は庫裡があり方丈があり石庭があります。そして方丈の中央の部屋には必ずと言って良いほど上人の坐像があります。詳しいことは全くわかっていませんが、奈良のお寺は基本的に仏像がご本尊であり仏像が主流のように感じるのですが、京都に来るとそれが変わっているように感じます。仏像ももちろんあるのですが、それよりも庭や上人が前面に出てきているように感じるのです。どこかより精神性を重んじているような感じと言ったら良いのでしょうか。岩を仏像と同じように見る、というのもまた奈良ではあまりない光景のように思うのですが、どうなのでしょうか。

時間を持て余して国立博物館に行ってきました。年間パスポートを持っているので、特別展に行かなければ入場料はかかりません。名品ギャラリーと呼ばれている常設展では少ないながらも仏像たちを拝観する事ができます。先日訪れた京都と奈良の県境近くにある寿福寺の明王の像があったのには驚きましたし、嬉しかったですね。

それでも時間が余りすぎ、結局新幹線の時間を二時間も早めて帰路についてしまいました。
これで私のゴールデンウィークも終わりです。充実したゴールデンウィークでした。奈良、最高です。滋賀も良いです。京都・・・、ごめんなさい。

次回はいつでしょうか。今から楽しみです。


人・人・人 ~京都 鞍馬寺~

京都です。暑いですが天気は下り坂ということで、日差しが減った分、少しは過ごしやすいでしょうか。

なるべく人がいないところに行きたいと思って鞍馬寺へ行ってきました。朝一で行ったこともあり、叡山電車では座れましたし、ケーブルカーもすぐに乗れました。多宝塔や本堂は比較的最近建てられたらものらしく、私が好きな趣はありませんてしたが、霊宝館の仏像たちが素晴らしかったです。

鞍馬寺の山門前

鞍馬寺は毘沙門天を本尊としているということで、霊宝館に五躰もの毘沙門天が安置されていました。コンクリートの建物ですから建物自体に趣などかけらもありませんでしたが、そこにいらっしゃる毘沙門天たちは一見の価値は十分にあります。

鎌倉時代の毘沙門天が三躰、平安時代の毘沙門天が二躰、そして平安時代の聖観音が一躰。鎌倉時代の毘沙門天は三躰とも腰を右にくっとひねって右手を腰に当て、左手には槍のような物を持ち、足下にはコミカルな邪鬼が踏みつけられています。三躰とも表情は異なるのですが、立ち姿がまったく同じなので、並んでダンスでも踊っているようにも見てしまいました。失礼な言い方かもしれませんが、そんな三躰がとてもかわいらしいというか魅力的でした。

国宝の毘沙門天はすっくと立ち、左手を額に当てて遠方を臨み、眉間に皺を寄せて睨みつけています。毘沙門天は北方を守る四天王、多聞天とも呼ばれます。鞍馬寺は京都市内から見ると北側に当たりますので、京都の北側の守り神として鞍馬寺に安置されたのでしょう。こちらの毘沙門天はとても凛々しくまさに国を守る軍曹といった感じでしょうか。その脇侍の一人として小柄な吉祥天もいました。吉祥天は毘沙門天の妻、つまりヴィシュヌ神の妻ラクシュミーということです。

さらにその隣には聖観音菩薩がいます。右足をほんの少し持ち上げて、まさに歩き出そうとするような雰囲気です。平安時代とのことですが、少し外国人っぽい雰囲気も持っています。

さて、鞍馬寺からはハイキングコースを経て貴船神社まで抜けられるようなのですが、神社は苦手ですしハイキングという感じでもないので、引き返すことにしました。鞍馬寺の本堂まで戻ってくると、続々と人々が登ってきます。礼拝ポイントの場所の後ろにはずらりと人が並んでいます。

さらに坂を下って鞍馬寺の駅まで戻ってきたのですが、ここでも続々と人々が到着しています。帰りの電車はまだがらがらでしたが、登ってくる反対側の電車は満員です。これほどまで人気のスポットなのか、ゴールデンウィークのなせる技なのかわかりませんが、朝早く来て良かったと胸をなで下ろしてしまいました。

そういえば、鞍馬寺の狛犬は犬ではなく虎です。仁王門前の両側にも、本堂の両側にも狛犬ならぬ狛虎がいました。それから、鞍馬寺は義経とも縁のあるお寺なのだそうで、義経にまつわる場所やものもずいぶんあったようです。あまり興味がなかったのでほとんど見てませんが。

山門前の狛寅
本堂前の狛寅
本堂前の狛寅 その2
この後は昼食を食べに大徳寺へ向かいます。




2015年5月2日土曜日

暑さと人と ~法隆寺~

久しぶりの法隆寺です。といっても、三ヶ月振りくらいでしょうか。聖林寺からバスで桜井に戻り、桜井から近鉄線で大和八木経由で筒井まで行きます。そして、筒井からバスで法隆寺前まで行きます。フリー切符を使うと近鉄線と奈良バスが乗り放題なので、この方法が一番早いようです。

到着したのが午後一時前でしたから、まさに気温はぐんぐん上がっています。予報では今日の最高気温が30℃と言っていましたから、すでに少なくともそれに近い温度にはなっているでしょう。それに法隆寺は意外と日陰が少なく、参道の照り返しもきついので、歩いているとくらくらしてきます。帽子を忘れた私が悪いのですが、さすがにきつかったです。

まだお昼を食べていなかったので、いつものお蕎麦屋さんに入りました。遅めの時間にもかかわらず、中はほとんど満席状態。たまたま空いていた二人掛けの席に案内してもらいました。顔を覚えてくれているお姉さんもいて、忙しそうにしながらもにっこり笑いながら、こんにちは、久しぶりです、と声をかけてくれました。ここでいつも頼むのが梅蕎麦です。今日は奮発して梅とろろ蕎麦にしてみました。暑いので冷たいお蕎麦と梅が体にいい感じです。

そしていよいよ法隆寺です。やはり素晴らしいです。もう何度も見ていますが、いつも見とれます。回廊がいい感じに日陰になって気持ち良い風も吹き抜けるので、柱に寄りかかりながらしばし見とれていました。回廊の柱のエンタシス、五重塔の隅鬼、金堂の登り龍と降り龍。雲肘木など、毎回見ても飽きることがありません。

法隆寺の五重塔
法隆寺の回廊
金堂にはどうやらすべての仏像が戻られているようでした。一度は毘沙門天と吉祥天が出張中でしたし、前は四天王の一人広目天が出張中でした。でも今回は全員いらっしゃいます。ここの四天王は釈迦如来や薬師如来と同じように、とても異国的な顔をしています。日本最古の四天王と言われるだけあって、他の四天王とは全く趣が異なるのです。

まず他の四天王は基本的に厳つい顔と躍動感あふれる姿をしていますが、法隆寺金堂の四天王は全く恐ろしい顔をしておらず直立不動です。邪鬼を踏んづけているというよりは、邪鬼の上に立っている、という感じです。邪鬼もコミカルというよりただ四つん這いになっているだけです。あまりにも違いすぎるのですが、広目天が持つ筆と巻物、多聞天が持つ宝塔は同じですから、やはり四天王なのです。それに、この四天王も意外と好きです。最初こそ、えっ?これが四天王?とも思ったのですが、何度か見ているうちに、これはこれでなかなかいいんじゃない、と思えるようになってきました。

やはり法隆寺の五重塔は特別です
五重塔の隅鬼
隅鬼 その2
それにしても暑いです。西伽藍から宝蔵を経て東伽藍の夢殿に向かったのですが、前述したように日陰は全くありません。頭の後頭部に日が燦々と照りつけます。夢殿では春の特別開帳が行われていて、一年ぶりに救世観音に会ってきました。こちらの観音様は何度見てもなかなか好きになれるようなお顔ではないのですが、岡倉天心やフェノロサを魅了したとのことですから、私にはわからない何かを持っているということでしょうか。

途中の宝蔵館でお目当ての仏像を確認できました。先ほどの聖林寺で、十一面観音の脇にいた多くの仏像の一つが現在は法隆寺にある国宝の地蔵菩薩である、と書いてあり、これは確認しなくては、と思っていました。宝蔵館で大きな国宝の地蔵菩薩は見つけられました。でも、これが聖林寺で書かれていた地蔵菩薩なのかどうか定かではありません。というのも、宝蔵館の仏像たちにはほとんど説明書きがないからです。でも、他に国宝の地蔵菩薩は見つからなかったので、一応これがそうであろうと勝手に納得しながら、十一面観音の脇に立っている姿を想像してみました。

暑い中、もう一度西伽藍へ戻ります。今度は正面から日差しを受けるので、暑いだけでなく眼もまともに開けられません。強い西日を受けながらがんばって歩きました。西伽藍では五重塔と金堂の正面の日陰に腰を下ろしてしばし休憩です。今回は法輪寺や法起寺へ行く元気はありませんでしたので、この後は最終目的地の京都へ向かいます。

バスで筒井駅へ向かい、近鉄線で京都です。京都はきっと奈良よりもっと人がすごいのでしょう。ゴールデンウィークの真っ只中ですから。明日、どうするかも決めていません。明日も暑そうですし、あまり人がたくさんいるところには行きたくないのですがどうでしょうか。悩みます。









麗しき十一面観音 ~聖林寺~

談山神社からバスに乗り、聖林寺にやってきました。ここも本当に人がいません。バスが一日に七、八本しかありませんから、車がなければ余程のことがない限り、なかなかここまで足を延ばすのは難しいかもしれません。まあ、私にとっては時間をかけてでも会いたい十一面観音ですから、不便でも時間を持て余すことになっても訪れたい場所の一つです。

聖林寺の門

まずはともあれ十一面観音です。すらりとした体ですが、お顔はわりとふっくらしています。個人的に好きなのは手ですが、この手も意外にふっくらしています。そして、特に右手の形が優しい。何も考えずに右手を下ろしてあの形にはなりませんから、何らかの意図があるのでしょう。中指と薬指を若干曲げた形で、手を差し伸べようかとする瞬間のようにも見えます。

顔や体の剥落が激しく、特にお顔には剥落による筋がいくつか入ってしまい、なんとなく痛々しい感じがします。この筋のせいで、初めて写真で見たときはあまり魅力的に見えなかったのですが、初めて会ったとき、これは素敵な観音様だ、と思ったわけです。金ぴかの仏像はどうも好きではありませんが、作られた当初は金ぴかだったのでしょう。それは多分多くの仏像がそうだった訳で、今見る古い仏像がいいなぁ、と言っている私は本当の仏像好きではないのかもしれません。古刹もきっと同じことですね。それでもやはり、古刹や古い仏像を見て回るのは楽しいものです。それらを作った先人たちの思いを感じだい思いが強いのかもしれません。

バスの時間までたっぷりあったので、十一面観音を見つめながらいろいろ考えてしまいました。仏教とキリスト教の違いって、多神教か一神教だけのような気がして、よくわからなくなってきています。キリスト教は唯一の道はキリストのみと説きますが、仏教は様々な道があると説きます。神は存在すると信じてはいますし、自分はクリスチャンだとも思っているのですが、仏像を見、杉の巨木を見、お寺を巡っていると、わからなくなる、というのが正直な気持ちです。

まあ、そんなことを考えてもまだ30分近くもバスの時間まであったので、大和盆地、三輪山などが一望できるお寺の縁側でぼけっとしてました。今日も日差しは強いのですが、日陰に座っていると、吹き抜ける風はとてもとても気持ちがいいのです。贅沢な時間を過ごしていると思います。

聖林寺から見渡せる奈良盆地
聖林寺の庭
左奥に見える古墳は卑弥呼の古墳らしい

神社は難しい・・・ ~談山神社~

まずは談山神社へ向かいます。談山神社といえば紅葉や蹴鞠、そして藤原鎌足で有名な場所です。が、神社です。苦手な場所です。

桜井駅を8時12分に出るバスに揺られること20分。談山神社に到着しました。紅葉で有名な場所だけあって、確かにモミジはたくさんありますし、新緑はキラキラ輝いています。十三重塔もなかなか立派です。

談山神社の鳥居
談山神社の十三重塔

でも、です。やはり苦手意識があるためか、う~ん・・・という感じになってしまいます。神社がなぜそこまで苦手なのかよくわからないのですが、ダメなのです。昔は神仏一体でしたから、そもそも神社とお寺は共にあったわけで、好きなお寺はたくさんるのに、好きな神社が一つもないというのは、自分で考えても不思議です。理由の一つになるかもしれませんが、なぜか神社は不気味に感じてしまうのです。怖い感じがしてしまいます。「とうりゃんせ」のイメージと言ったら良いのでしょうか。勝手なイメージ何ですけどね。

拝殿の中に入ってもあまりぴんときません。写真も何枚か撮りましたが、気持ちが入っていないせいか、なかなかいい感じのものが撮れません。そんな中、鏡大王の社があって、恋のおみくじなる物があったのでつい買ってしまいました。普段、おみくじなど買わない主義なのですが、今回はなぜか手に取ってしまいました。小吉だそうです。相性のいい星座やら干支やらが書かれていますが、どうすればいいの?という感じ。さらに書かれていた恋の歌が「しっかりと 愛を誓った時も過ぎ 消えたはかない 涙の雨か」だそうで、悲しすぎませんか?! ということで、おみくじも微妙でした。

鏡女王

まあ、大化の改新に縁のある場所ですから、一度は来てみて良かったとは思います。

2015年5月1日金曜日

石楠花と新緑と ~宇陀 室生寺 その②~

長谷寺に一時間ほどしかいなかったのは、自分でも少し驚きでした。確かに牡丹は満開でした。色とりどりの大きな牡丹はすごかったのですが、なぜか今一つなのです。人が多いというのも一つの要因にはなるでしょうが、大好きな法隆寺なども多いときは今の長谷寺と同じくらい人がいます。ですから、やはり感覚的に好きかどうかなのでしょう。

長谷寺の本堂

長谷寺の五重塔

そんなことで、さっさと室生寺に戻ることになったわけですが、室生口大野から室生寺までの道すがら、長谷寺と室生寺を結ぶ道すがら、目を引いたのは自生の藤の花です。緑鮮やかな山の斜面に、ときどき緑以外の色が目に飛び込んできます。藤色が淡いながらも緑の中で意外に目立ちます。藤棚もいいですが、自生の藤の花がまた素敵です。他の木にからみついた形で伸びていく藤の花。ぼーっとしていても、ちらっと見える藤色にハッとさせられます。

室生寺に戻ってきました。赤い太鼓橋近くの食堂で遅い昼食を取りながら、太鼓橋を渡っていく人たちをぼーっと見ていました。さずにこの時間は絶え間なく人々が太鼓橋を渡って室生寺の境内に入っていきます。

まず本堂前のベンチに座って本堂をぼーっと見ていました。すると、警備員という腕章をつけたおじさんが挨拶をしてくれました。室生寺で働く職員の方々はとても気さくな方が多く、にっこりと挨拶をしてくれる人が多いのも室生寺の魅力の一つです。

何回見ても飽きない

今まで警備員の姿を見たことがなかったので、もしかしてあの文化財に油を撒くという事件の影響ですか、と聞いてみると、そうです、と言います。室生寺は運良く被害には遭っていませんが、まだ犯人が捕まっているわけではないので、こうやって目を光らせているのだそうです。先ほどは、警備員のような制服を着た方も目にしたので聞いてみると、その人はれっきとした警察官なのだそう。大変だとは思いますが、何かあってからは遅いですから、がんばってほしいです。奥の院へは一日四往復するということですから、これまた大変です。本当にひどいことをする人がいるものです。

20分ほど話をさせていただいたでしょうか。見回りに戻ります、と本堂の方へ向かわれました。ふと五重塔を見てみると、いい感じに太陽の光が当たっています。カメラを手に五重塔まで行ってみました。今まで、この時間帯に室生寺に来たことがなかったので、この光の加減で五重塔を見るのは初めてです。

西日に照らされる五重塔

季節によって、天気によって、時間によって様々な表情を見せる室生寺。大好きな室生寺ですからいろいろな表情を見たくなるわけです。だからこれだけ頻繁に訪れてしまうのです。これからもたくさん来る気がします。夏も、紅葉の時期も、できれば雪景色も見たいですし、石楠花はまたリベンジしないといけません。桜の季節もまた訪れたいと思っています。そう考えると当分室生寺から離れられそうにはありません。

次回はいつでしょうか。






石楠花と新緑と ~宇陀 室生寺 その①~

室生寺に行ってきました。今回の旅のメインの場所です。朝から青空が広がり、今日も暑くなりました。

石楠花ですが、前々から言われていた通り、やはり今年はダメでした。昨年咲きすぎたのと、鹿に花芽を食べられてしまったというダブルパンチをくらったようです。それでも私は十分満喫してきました。

桜井という室生口大野に近い場所に宿泊したので、朝は久しぶりにゆっくりでした。ただ、朝早くから動くことが体に染み付いてしまっているようで、どうも手持ち無沙汰になってしまい落ち着きません。

室生口大野に到着すると、すでに室生寺行きのバスには数人の観光客が乗っていました。始発のバスなのですが、やはりこの季節は人が多いようです。

バスに揺られること15分。室生の里が見えてきました。赤い太鼓橋を渡って境内に入ります。

太鼓橋を渡ったところの石楠花
確かに石楠花は少なすぎました。昨年を知るわけではありませんが、写真で見る石楠花とはあまりにも異なる状況でした。咲いている石楠花はとても綺麗なのですが、ポツポツとしか咲いていません。石楠花を目当てに来る人からすれば、残念な状況と言わざるを得ません。

石楠花と本堂

でも私は室生寺好き、ということもあり、思ったより残念という感覚はありませんでした。室生寺に甘いのでしょうか。また来年だな、とまた来られることを楽しみにできるからかもしれません。それに、室生寺の新緑がまた見事だったのです。特に本堂の周りのモミジは圧巻でした。うわぁ~、と小さく声を漏らしてしまったほどです。もともと優美な反りを見せる本堂ですが、それに鮮やかな新緑が重なるのです。檜皮葺の屋根と新緑のコラボにしばし見とれていました。
モミジがまぶしい

室生寺本堂とモミジ

石楠花と五重塔
頑張って奥の院へも行きました。400段近い階段をゆっくりゆっくり登ります。そして、奥の院の納経所を見てみると、網代僧侶と何度かお会いしている職員のおじさんがいます。こんにちは、と声をかけると、さすがにもうすぐにわかってくれるようになりました。嬉しいものです。

「やはり石楠花はダメでしたね。」
「そうなんですよねぇ。申し訳ないです。」
「でも、新緑は見事ですよね。」
「そうなんですよ。だから紅葉の時期はいい感じになりますよ、きっと(笑)」
と会話ができるのも楽しい。今回は人も多かったので、長居はできませんでしたが、それでも紅葉の話だけでなく、龍穴神社のことも教えていただきました。室生寺の前身といわれる神社ですし、今日みたいな日も誰もいないからとても静かですよ、と言います。また、数百年は経っているだろうという杉の巨木もあります、と教えてくれました。

そういえば、ご朱印の話にもなり、今は退職された方で、今日のような繁忙期にしか来られない方のご朱印を頂いたんですね、と言われました。本堂で頂いたご朱印なのですが、年配の男性でとても達筆かつ素敵な文字を書くなあ、と思っていたのです。それがまさに「レア」なご朱印なのだそうです。網代僧侶の文字も特徴がありますし、それぞれの方の文字はそれぞれの特徴があり、同じことが書かれていたとしてもやはり違うので一つ一つが大事なのです。

石楠花とモミジと
優美な五重塔

せっかく教えていただいた龍穴神社なので、行ってみることにしました。今日は室生寺と長谷寺しか行く予定はないので時間はたっぶりあります。と言っても、龍穴神社までは歩いて五分ほどの距離でした。

確かに誰もいませんし、杉の巨木がまっすぐそびえていました。あまりにも静かですし宮司も職員もいないので、ただぼけっと突っ立って見ているだけでしたが、それなりに来た価値はあるとは思います。もともとお寺には興味があるのですが、神社はあまり興味がないので、このような感想になってしまうのも仕方ないことかな、と自分を正当化してしまいました。

龍穴神社
龍穴神社の狛犬と杉の巨木
そのまま室生寺を通り越して、長谷寺行きの臨時バスに乗り、50分ほど揺られて長谷寺まで行ってきました。室生寺も次々に人々が訪れていましたが、長谷寺はその比ではありませんでした。続々と人が訪れ団体が到着します。牡丹の花は確かに綺麗でしたが、私はダメでした。行われていた法話も聞きましたが、申し訳ないですが今一つ。ということで、一時間ほどいたのですが、もういいや、とまたバスに乗り込み室生寺に戻ってきてしまいました。