2014年8月21日木曜日

プノム・ボック

アンコール地域には三聖山と呼ばれる3つの山がある。プノム・バケン、プノム・クロム、そしてプノム・ボックだ。

プノム・バケンはアンコール・ワットのすぐ近くで夕日鑑賞でも有名な場所なので、夕方になるとあふれんばかりの人、人、人になってしまう。プノム・クロムはトンレサップ湖近くにあり、それほど有名ではないけれど、夕方には数組の観光客や地元のカンボジア人がピクニック気分で訪れたりする場所だ。割と静かに夕日鑑賞ができるので、個人的には好きな場所でもある。

3つ目のプノム・ボックは三聖山の中でも一番知られていない山だろう。バンテアイ・サムレという遺跡へ行く道をさらに進んでいくと、プノム・ボックへの入り口が左手に見えてくる。前に一度だけ訪れたことがあり、登るのに苦労した覚えがある。ここは三聖山のなかで一番きついかもしれない。何しろこの階段が1580段も続くのだから。

1580段もあるという階段

それでもほとんど観光客はいないし静かに鑑賞できる場所なので、今回は久しぶりにいって見ようと思った。ところがどうも様子がおかしい。車がたくさん停めてあるし、多くのカンボジア人たちが山を登って行く。いつも一緒に行動してくれる友人のカンボジア人Nくんによると、どうやら山頂でミーティングなるものがあるらしい。アプサラ機構の人たちもいるし、3,40人はいるだろうか。

それにしても階段はきつい。最初は緩やかな山道なのだが、途中から階段に変わる。最初に15800段と書いてあり、嘘でしょ!と思ったのだが、100段ほど登ったところには1400と書いてあったので1580段の間違いだとわかる。登っているカンボジア人たちもやはり疲れるらしく、途中で休憩中の彼らと何度かすれ違う。面白いのは、そんなに幅のない階段なのに、そこに座り込んで休んでいることだ。正直邪魔になるのだが、彼らは一向に構わない。まさにカンボジア!

登り切ったところに祠堂が残されている。手前に三つ、後方にも三つの祠堂が並ぶ配置になっているようだ。ずいぶん崩壊が進み、修復の手もまったく入っていない。

手前の祠堂

で、彼らだが、どうやらぼうぼうに生えている草木の伐採をする人たちも加わっているらしく、バッサバッサと切っていた。それはそれでいいのだが、人が祠堂近くのレリーフの写真を撮っていたら、突然上から草木が落ちてきた。危ない!と思って見上げると、祠堂の上に登ったおじさんが、祠堂に生えている草木を伐採しつつそれを下に投げ落としていたのだ。下を見れば私がいるのはわかっているのに、これまた一向にお構いなしである。さすがにちょっとムッときたがこれもカンボジア流。

草木を伐採する人々

ここには壊れてしまってはいるが、大きなリンガが残されている。祠堂から少し奥まった所にある。大きいリンガといえば、コーケーも有名だが、ここのリンガも大きさでは負けていないだろう。割れてしまっているのが残念だが、見る価値はあると思う。

割れてはいるが巨大なリンガ

個人的に気に入ったのは、中央に立っている祠堂の脇に残されたアプサラだ。顔の上部は欠けてしまっているが、口元に優しい微笑みを浮かべている。近くで見るには草を少しかき分ける必要があったが、足元に気をつけながら近づいてみる。顔の上部が欠けている分、勝手に想像できてしまうので、実際のアプサラより美人に考えてしまっているかもしれない。でもそれもありだと思う。もうもとの顔を見ることは永遠にできないのだから。

麗しのアプサラの微笑み

きついのを承知でカンボジアの山(丘?)に登るのは、この光景を見たいから。どこまでも続くカンボジアの大地と頭上に広がる大空。こんな風景を見ると疲れも吹き飛ぶ。プノム・クロムでも同じだが、この広大なる風景を目の当たりにすると、自分の抱えている不安や悩みがちっちゃく見える。また元気をもらえた。


どこまでも続くカンボジアの大地と空

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