2015年11月23日月曜日

入江泰吉 回顧展

2日目の午前中、東大寺を訪れた後、入江泰吉美術館へ行ってきました。この時期、「回顧 入江泰吉の仕事」という特別展示が行われていて絶対に行きたいと思っていました。個人的にとても好きな写真家ですし、あの大和路を優しく見つめ続けてきた人です。遠い存在ではありますが、彼の写真はとても好きなのです。知人にも写真は写真集で見るのもいいけれど、やはり美術館でしっかり見てきた方がいいよ、ともアドバイスを受けていました。そんなこともあり、今回訪れたのです。

開館の9時半と同時に入館しました。最初は文楽の写真だったので素通りに近いことをしてしまいましたが、大和路の写真はすべてじっくりと堪能させてもらいました。白黒もカラーもしっとりとしているというか、落ち着きのある優しい眼差しが感じられます。

特に好きなのがやはり室生寺の写真でしょう。私には撮ることのできない十一面観音立像や釈迦如来坐像を始め、石南花と五重塔や金堂などの写真が目を惹きます。もともとは白黒を主に扱ってきたようですが、時代と共にカラーも扱うようになっていったのだとか。そのときの心境を綴った文章があるのですが、一番記憶に残っているのが、「いかにして色を殺すことができるか」という言葉です。カラー写真なのですから、色を殺すなど逆のように聞こえるのですが、私にはなんとなく感じることがありました。色があるとその色に振り回されてしまう気がしたのです。もっとこんな色ならいいのに、もっと鮮やかだったらいいのに、この色はいらない、などとついつい思ってしまう自分がいます。でも風景を写真に撮るなら尚更、そのままで撮らせてもらうしかないのです。それよりも構図やそこでどう切り取りたいかという自分の想い、そのようなところが大事なのかもしれない、と改めて思わされました。

最後の小さな売店でまたもや衝動買いです。もう一人の大和路の写真家である土門拳と入江泰吉の二人の写真集があったのです。それも、同じ被写体が左右に並べられていて、とても興味深いのです。パラパラとめくっていた中でとても印象的だったのは、室生寺の釈迦如来坐像の横顔です。まったく同じ被写体ですし、同じ構図なのに表情が異なって見えるのです。この瞬間に、これは買うしかない、と思ってしまいました。

この後は、長岳寺へ向かいます。


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