2015年1月7日水曜日

コーケー その② カンボジア

プラサット・トムを見学した後、点在するいくつかの遺跡を見て回った。まずは、プラサット・リンガと呼ばれる祠堂だ。同じ名前の祠堂がいくつかあるのだが、その全てに巨大なリンガがある。祠堂そのものはそれほど大きいものではなく、今ではポツンと建っているだけなのだが、中にあるリンガはどれも巨大である。プラサット・トムのピラミッドの頂上にもこれ以上の巨大なリンガがあったのだろう。なぜこれほどまでに巨大なリンガが必要だったのだろう。リンガはシヴァ神の象徴でもあり、やはり権力を誇示するために必要だったのだろうか。ヨニと呼ばれるリンガの台座には、やはりガルーダの姿を確認することができる。ただ不思議なのはガルーダはヴィシュヌ神の乗り物なのに、なぜシヴァ神の象徴であるリンガを支えているのか、ということだ。日本に戻ってカンボジア語の先生に聞いてみたい。

プラサット・リンガ
次に訪れたのは、プラサット・クラ・チャップという遺跡で、ここは割合と広い。いくつかの祠堂が残されているが、ここの見所は綺麗に残っている碑文だろう。入口付近の柱に残された碑文ははっきりと残っているだけでなく、文字そのものがとても綺麗なのだ。今までに色々な碑文を見てきているが、やはり文字の癖などがあり見るからに美しい文字とそれ程でもない文字がある。このプラサット・クラ・チャップの碑文はとても綺麗な文字で書かれていた。昔の文字なので理解することも読むこともできない。ドライバーさんも一緒に来てくれて、この碑文の場所を教えてくれたが、やはりまったく読めないのだという。文字は今でも利用されているものが多くあるが、やはり単語などが異なるようだ。中をぐるりとまわるが、やはり崩壊が進み多くあるが多くの祠堂が崩れ去ってしまっている。残念だが仕方のないことなのだろう。

プラサット・クラ・チャップの碑文
プラサット・チュラープを簡単に見学したあとに向かったプラサット・ドムライは小さいながらも見応えがあった。ドムライとはクメール語で象を意味するのだが、ここにはまさにその象の像が4体残されていた。祠堂の四隅に立つ4体の象の内、2体が比較的綺麗に残されている。鼻の部分はやはり壊れやすいのか、割れてしまったところを重ねて補修されているが、胴体に施された飾りの鐘や首飾り、優しそうな目などははっきりと残されている。足は短めでどっしりと構えていながらも、可愛らしさも兼ね備えていて、京都の東寺で見た帝釈天が乗る象を思い出してしまった。また、1体だけライオンも残されていた。顔の部分は割れてしまっているが、体全体は綺麗に残っている。すべてのライオンそして象を見ることのできた当時は、とても素敵な祠堂だったのではないだろうか。

プラサット・ドムライの全体像

プラサット・ドムライの象
昼食の前にもう一つ祠堂を見学した。プラサット・チェンだ。チェンは中国という意味を持つのだが、この遺跡の名前が中国に関連することなのかはよくわからない。ここには大きな祠堂が5つ建っている。ずいぶんと崩壊が進み、前面がすべて崩れているものもあるが、なかなか立派な祠堂だったことは想像できる。彫刻も所々に残されており、クメールの神話(ヒンドゥー教の神話)をモチーフにしたものがいくつか確認できた。

さてお昼だが、プラサット・トムにいったん戻り、入り口付近にある食堂に行った。すでに多くの観光客で賑わっており、店員も忙しそうに動いている。ドライバーさんに何が食べたいか聞かれたので、無難に野菜炒め、と答えると、OKとどこかへ行ってしまった。イスに座りながらぼんやりと当たりを見回してみる。ドライバーさんは全然戻ってこない。どうしたのかと思っていたら、なんと自分で台所で料理をしているではないか。そして、豚肉入りの野菜炒めとクメールスープを持ってきた。自分で料理したんですか?と驚いて聞くと、今は客が多くてこのままだとなかなか料理が出てきそうになかったから、という。味はあまり良くないかもしれないけど、恥ずかしそうに言うが、なんのなんのとても美味しい。美味しいです、と言うと、照れながら、ありがとう、と言う。それにしても、自分で料理してしまうとは。それができてしまう食堂って・・・。カンボジアらしい、と言ってしまって良いものなのだろうか。



スープ・野菜炒め・コーヒー
ここで頂いたコーヒーも美味しかった。カンボジアの甘い香りのするコーヒーで、個人的には一般的なコーヒーよりも好きである。ただ、日本では売っているところを見たことがないので、カンボジアで飲むしかない。それでも、最近のカンボジアでは一般的なコーヒーを出す店も増え私からするととても残念な状況になっている。カンボジアのラタナキリという州がこのコーヒーの名産地なので、コーヒー(ラタナキリ)と書いてあると、私が望むコーヒーだということがわかる。普段はコンデンスミルクをいれて飲むのだが、今回はこのコンデンスミルクが切れているということで、普通の牛乳をいれて飲む。香りが良くて大好きである。

それにしても、この食堂の値段差は思いっきり観光客値段である。野菜炒めで6ドルもするのだ。700円と考えれば安いのかもしれないが、カンボジアの値段とすると完全にぼったくりである。地方に行けば2ドルもしない値段のはずだ。それも作ったのはドライバーさんである。なんか納得できない気もしたが何も言わずコーヒーと合わせた合計7ドルを支払う。野菜炒めの最後の一口分をもらったら、ドライバーさん、とても嬉しそうな顔をしていた。

食後に二つの遺跡を巡った。プラサット・ニエン・クマウとプラサット・プラム。ニエン・クマウとは黒い娘という意味を持つのだが、なぜそのような名前がついているのかはわからない。一つの祠堂がポツンと残っているだけだが割合と綺麗に残されている。
プラサット・ニエン・クマウ
個人的に気に入ったのはプラサット・プラムだった。プラムとは5という意味があり、ここには5つに祠堂が残されていた。そのうちの二つには大きな木の根が絡みつき、あたかも根が祠堂を縛り上げている、そんな感じだった。確かにこのような木の根や植物の成長が遺跡を破壊しているのだろうが、ここまでくるとこの木を切ってしまうと逆に祠堂は崩れてしまうのだろう。根によって崩れるのを防いでいるといっても間違いない。難しい状況だと思う。

プラサット・プラムの全体像

プラサット・プラムの一つの祠堂
これでコーケーの見学は終了だ。ブログの順番は逆になってしまったが、この後ベン・メリアに向かった。久しぶりのコーケーだったが、やはり来て良かったと思う。またここもどんどん変わっているのだろうし、観光客も増えていくのだろう。アンコール・ワット周辺に集中しすぎている観光客を分散させるためには、このような地方の遺跡へのアクセスや環境の整備が必要だ。今後、ますます静かに観賞できる遺跡は減っていくのだろうが、それは仕方のないこと。受け入れるしかないことでもある。ただ、遺跡にとってプラスとなるような変化であって欲しいと強く願っている。




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