2015年1月4日日曜日

変わりゆく街 シェムリアップ

シェムリアップの街は本当に変わった。個人的な思いをこめた言い方をすると、変わってしまった、と言うべきかもしれない。

初めてシェムリアップを訪れたのは2000年より前だったか。当時ではまだ数少ないホテルの一つタ・プロムホテルに泊まった。先日も書いたが、このタ・プロムホテルは当時は高級ホテルに分類されていた。街中の道の赤土のままだった。トゥクトゥクはまだ存在もしなかったし、移動手段といえばチャーターした車かバイタクしかなかった。信号機なんてどこにもなかったし、車よりもバイクの方が多かった。バスだって現地の人たちが利用する古い長距離バスの姿しか見た記憶がない。

それが今ではトゥクトゥクがどこにでもおり、逆にバイタクの姿を見かける方が少なくなってしまった。街中には多くの信号機が取り付けられ、バスや車が走り、夕方にもなると、オールドマーケット付近は大渋滞になる。交通ルールなんてないようなものなので我先にと前へ進もうとし、それによって逆にさらに動かなくなってしまうというい悪循環が繰り返されている。新しい道もどんどん増え、そしてその道の周辺には新しいレストラン、新しいホテル、新しい店が続々と建てられる。

タ・プロムホテルが建つ川沿いを見れば、川向こうなんて民家がポツポツと見える程度で、川では女性が洗濯をしていた。子供達が川に飛び込んで遊んでいる姿もよく見かけた。それが今ではどうだろう。ハードロックカフェができ、新しい大きなマーケットができ、まったく異なる場所になってしまった。

オールドマーケットで売られている物もずいぶん変わった。前々からお土産物屋はたくさんあった。ただ、品揃えはあまり良くなく、めぼしいものといえばクロマーとTシャツくらいしかなかった。それがここ数年の間に様々なグッズが店頭に並ぶようになり、選択肢がぐっと増えた。それはそれなりにいいのだが、残念なのは、現地の人たちが買い物をするような食材を扱う店が減り、観光客相手のスパイスなどを扱う店が一気に増えたことだ。もちろん今でも様々な食材を扱っている店はまだまだ多いし、観光客にとっては面白い市場だとは思う。ただ、変わり様を見てきているだけに、残念に思ってしまう。

昔の方が良かった、と私が言えたものではないのは重々承知なのだが、勝手なブログということで許してもらおうと思う。今回お世話になったドライバーさんに、今のシェムリアップと以前とどちらが好きですかと聞いたところ、前の方が、という答えが返ってきた。すべての人が同じように考えているとはもちろん思わないが、やはり今のシェムリアップは落ち着きがなさすぎる気がする。この目覚ましい発展の恩恵を受けているのも、ごく一部の人のような気がしてならない。富めるものはさらに富を得るが、一般的な庶民はそれほど生活が豊かになったようには見えない。金と権力がある者だけがさらに力を得てしまっているような気がする。

アンコール・ワットは大好きである。でも今のシェムリアップは好きじゃない。もう元には戻れないことも重々わかっている。それでもあえて言わせてもらう。今のシェムリアップは嫌いだ。いつもお世話になっているドライバーくんや、機織り工房で知り合った女性たちはとても良い人たちばかりで、彼らに会いたいからこそシェムリアップに頻繁に来ているが、彼らの存在がなかったら、ここに来る回数は減っていたのではないだろうか。それほど今のシェムリアップには魅力がない。アンコール・ワットだって何回も行きたいけれど、あの混雑ぶりを想像すると、どうしても足が遠のいてしまう。我儘な考えだということはわかっている。だけれども、以前を知っているからこそ、余計にそう思ってしまうのかもしれない。前を知っているだけでも幸せなことだと自分に言い聞かせている。

遺跡以外の楽しみを求める人たちにとっては、シェムリアップの変貌は良いことなのかもしれない。観光客用の洒落たバーやレストランができ、エンターテイメントの数も増えた。夜、遊べるような場所も増えているようだし、子どもが楽しめるような場所も増えているようだ。そんなこともあるのか、小さい子供との家族連れも増えた。そういう意味では、カンボジアも安全になり、観光客も増えて良かったとも言うべきなのかもしれない。

街が変わっていくのは仕方がない。受け入れなくてはいけないこともわかってる。アンコール遺跡は人々を魅了するのに十分なのだから、これからも増えるだろうし、今はまだ静かな郊外の遺跡も交通網がさらに発達すれば、静かに観賞するのはむずかしくなるだろう。それでもカンボジアに来続けるのか。それはきっと人々との関係に最後は関わってくる気がする。ドライバーくんや知り合った女性たちと会いたいと思えば来るだろう。でも、もしその糸が切れたときは・・・。それを今考えるのは少し寂しすぎる。

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