2014年12月9日火曜日

湖北の観音さま

井上靖氏の「星と祭」に出てくる観音さまに会いに行ってきた。初めて予約をしないと見られないところにも行ってきた。

以前から、湖北には多くの十一面観音がいる、ということは聞いていたが、予約をしないと見られないということも聞いていて、なんとなく面倒な感じがしていた。そんなとき、海住山寺で湖北の十一面観音の話を聞き、自分でさらに調べていく中で、これはやはり会いに行くべき観音さまたちだ、と思うようになった。

ネットを調べる中で、赤後寺、西野薬師堂、石道寺が割合と行きやすいようだったので、まずはそこから始めることにした。事前に赤後寺と西野薬師堂と担当者の携帯電話の番号を、観光センターに電話して聞いておき、それぞれの番号に電話して日時を予約させていただいた。赤後寺も西野薬師堂も、お寺があって住職がいて、というものではなく、村の人々が年ごとに世話役を引き受けている。村の人々に大事にされてきた観音さまたちなのだ。

赤後寺には二体の観音さまがいたが、二人とも手首から先がすべて失われていた。戦火から守るために、村人たちが仏像を川に沈めて守っている間に流されてしまったという。痛々しい姿ではあるが、素敵な観音さまでもあると思う。
赤後寺へ向かう道
赤後寺のお堂
西野薬師堂にも二体、安置されている。こちらは赤後寺の観音さまたちと比べると、背も高くキリッとした男性的な観音さまたちだ。村人たちが守っている観音さまがこれほど素晴らしいとは正直驚きだった。

さらに、西野観音堂から15分ほど歩いたところに正妙寺というお堂があり、ここには千手千足観音という珍しい観音さまがいると聞いたので、急遽電話をして開けてもらうことにした。突然で申し訳なかったのだが、快く開けてくれる。高さは30センチ程だろうか。観音さまには珍しく怒った顔をしている。そて何よりも足の数に驚く。もちろん千本の足が実際にあるわけではないが、たくさんの足がある。千手観音は多く見かけるが、千足観音はここだけにしかないのではないか、ということだった。


今回の湖北巡りで一番印象に残り、なおかつ気に入ったのが石道寺の十一面観音さまだ。うっすらと彩色の残るとても可憐な観音さまで、井上靖氏が「村の娘」の表現した理由がよくわかる。本当に素敵な観音さまなのだ。この観音さまはまた会いに来たいと思う。いや、湖北の観音さまには全員また会いに来たい。そして、その中でも絶対に外せないのがこの石道寺の観音さまだ。

石山寺へ来る途中の鶏足寺の跡の紅葉も、鶏足寺にもともとあった多くの仏像が収蔵されている己高閣や世代閣も素晴らしかった。何もないと思っていた湖北が一気に魅力あふれる場所になった一日だった。
己高閣という名の収蔵庫
鶏足寺跡と紅葉
ただし、足は大変だ。一時間に一本のコミュニティーバスを予約したり、一時間に一本の電車に合わせて行動したり。マイカーであれば何の問題もないが、個人的にはこの公共の交通機関と足にこだわっている。まあ、車を運転するのが嫌いだから仕方ないだろう。それに、コミュニティーバスはとってもローカルな乗り物なので、意外に好きでもある。

今度はいつ来ようか。帰りの新幹線の中ではそればかりを考えていた。

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