2015年6月9日火曜日

紫陽花の季節 ~京都木津 岩船寺~

紫陽花の季節です。奈良に限定されている花ではありませんが、やはり奈良に行きたくなります。ちなみに今回訪れた岩船寺は京都府にありますが、大和路のお寺に分類されているので、あえて奈良のお寺というラベルをつけています。

旅に出るとき、割と綿密に計画を立てるのが好きで、ずいぶん前から何時に出発して何時の電車やバスに乗るかなど、細かく調べていきます。その時間も楽しいので、晴れたときのバージョン、雨のときのバージョンを作ったりもします。何度も計画しては変える作業を繰り返すのですが、それでも結局当日に全とっかえ、ということもよくあります。今回もそれに近い状況でした。
最初は気に入っている海住山寺、紫陽花寺と呼ばれる岩船寺、浄瑠璃寺にも寄って帰ってこよう。そう思っていました。ところが思ったよりも雨が止みそうになかったので、急遽変更して岩船寺と三室戸寺に行くことにしたのです。

ところがここで問題が発生。順調にいけば、ほとんど待ち時間なしで一時間に一本という岩船寺まで行けるコミュニティーバスに乗れるはずだったのに、京都から木津までのJRがまさかの遅延。6分ほどの遅延でしたが、ギリギリの乗り換え時間しかなかったので、6分とはいえとても痛いのです。木津での乗り換えはわざわざ待っていてくれて乗ることができたのに、コミュニティーバスは間に合いませんでした。

次のバスは1時間後です。さすがに日帰りの京都で1時間を潰す余裕はありません。少々痛い出費でしたがタクシーを利用することにしました。約1800円でした。

岩船寺には最初、参拝者は私以外誰もいませんでした。雨は弱まっていましたが、まだポツポツと降り続いています。しっとりとした静かな境内がすばらしく、しばしぼーっと佇んでいました。青々と生い茂る緑の奥に、朱色の三重塔が見えます。鬱蒼と茂る木々の間から覗く朱色はよく映えます。

雨にかすむ三重塔
まずは本堂へ。大きな阿弥陀如来と凛々しいお顔の四天王が出迎えてくれます。中に入るとすぐに住職の方が出てこられて説明をしてくれました。今回心に残ったのは蝋燭の話でした。お堂に蝋燭は欠かせないものだと。電気は人の外側を照らすが蝋燭は人の内面を照らす。蝋燭は自らを溶かしながら周りを照らし、仏教の教えをまさに示していると。だから、美術館や博物館であれば仕方ないけれど、お寺に蝋燭は欠かせないのだと。最近は蝋燭型の電気もあるがどうなのですか、と聞くと、守るためには仕方のないことかもしれないけれど、あまり良い気はしませんな、とのことでした。火災などの危険回避を考えれば蝋燭は確かに危ないかもしれないけれど、やはりお堂の中でゆらめく蝋燭の光はどこか侵しがたいものがあるのも事実でしょう。

お堂に座っていると、外からポツポツと雨の音が聞こえ、時折カエルの鳴き声も聞こえてきます。いい感じです。このまましばらく座っていたかったのですが、お話好きの住職の方のようで話が終わりそうになかったので、頃合いを見計らって本堂の後ろ側にまわってみました。ここには個人的に気に入っている、普賢菩薩騎象像があります。もともとは三重塔に安置されていたそうです。普賢菩薩も小ぶりながら素敵なのですが、それより何より象の表情が大好きです。にへら~と笑ったたれ眼の顔で、威厳もへったくれもありません。ただ、他のお寺で見る象の眼もほとんどがたれ眼なので、岩船寺が特別というわけではなさそうです。それでも、ここまで表情がはっきり残っているものは見たことがなく、見ているとついついこちらの顔もほころんでしまいます。この象に会うために岩船寺に来てもいいと思えるくらい気に入っています。

普賢菩薩騎象像(パンフレットより)

ミニチュアの十二神将もなかなかかわいらしいです。頭が大きく三頭身か四頭身くらいの小さな像で、ずんぐりむっくりです。つい触ってみたくなってしまうのですが、もちろんそれはご法度です。センサーも取り付けられているようですが、そうでなくてもお寺の大事な宝物ですから、気安く触ろうとしてはダメですね。

紫陽花はまだ少し早かったようです。色づいているものもありますが、濃い色になるのはもう少し先のようです。それでも最近の雨のおかげか、瑞々しくとても柔らかな表情を見せてくれます。小さな丸い紫陽花を優しくポンポンと手の上で弾ませてみました。柔らかくてしっとりと雨に濡れていて、何とも言えないかわいらしさです。ずっと手の上でポンポンさせていたい感じだったのですが、ふと見上げた先に見えた紫陽花にギョッとしました。黒いゲジゲジの毛虫がくっついていたのです。自然豊かな場所にいるのですからそれなりに虫がいるのは大丈夫とはいえ、毛虫は無理です。落ちてこないで、と心の中で叫びながら、そっとその場を離れました。

紫陽花と本堂

紫陽花ですが、色が濃くなった紫陽花も好きですが、色が変わり始める頃の柔らかな紫陽花の方が好きかもしれません。そしてやはり紫陽花には雨が似合います。5月は暑い日が続き、雨もほとんど降らなかったため、地元の道端で見かける紫陽花はずいぶん元気がありませんでした。しょんぼりと首を垂れてしまっていたり、少ししおれかけているような状態になっていたりしていたのです。ですから、数日前から雨が降るようになり、やった!と思っていたわけです。普段は、大きなカメラを抱えていることもあり、雨はあまり降って欲しくないと思いがちなのですが、紫陽花のときは違います。雨でOKなのです。OKどころかウェルカムです。さすがに土砂降りはきついですが、それでも雨は大歓迎です。最近は何枚も撮るわけではないので、無理をせず鑑賞することも大事にするようにしています。そんなこともあり、雨は降り続いていましたが、思いっきり紫陽花を満喫することができました。
淡い青

三重塔の近くにも行ってきました。平成15年に修復されたばかりなので、新しい感じの三重塔ですが、先ほども書いたように濃い緑の中では朱色がとてもよく映えます。岩船寺は紫陽花寺と呼ばれてはいますが、四季折々の花が咲くようです。また楓などの木も多くあるようですし、紅葉の時期もきれいなのかもしれません。紅葉に埋もれる三重塔も見てみたいですが、紅葉の時期は行きたいところがありすぎて大変です。

三重塔と紫陽花

コミュニティーバスの時間が近づいてきたので、岩船寺を後にすることにしました。この頃には数組の参拝者たちが訪れていましたが、それでもとても静かです。不便だからこその静けさなのかもしれません。個人的にはとても良いことだと思っています。

このあと三室戸寺へ行ったのですが、まったく異なる雰囲気のお寺でした。






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