2014年9月25日木曜日

飛鳥のお寺 その3 ~~橘寺~~

橘寺は聖徳太子が生まれた場所と言われている。岡寺から急勾配の坂を下り主要道路に出た後、平らな道を進んでいき、少しわき道にそれたところに橘寺はある。山門をくぐって中に入ると、目の前が開け、正面奥に本堂が見える。その山門の柱に可愛らしいお坊さんの絵と共に、今日の一言と思わしき言葉か書かれた紙が貼ってあった。それだけで、あ、このお寺はいい感じだな、と伝わってくる。


最初に本堂へ行ってみる。ここのご本尊は聖徳太子ということで、本堂の中央には聖徳太子の像が安置されている。仏像には興味あるが、実在の人物の像にはあまり興味が持てず、珍しいなぁ、ほどの感想で終わってしまう。外に出て御朱印を頂きに行くと、御朱印帳に書かれた岡寺の御朱印を見て、「岡寺に行ってきたのかい」と声をかけられた。「自転車で周ってるの?」と聞かれたので、「いえ、徒歩です」と答えると、「坂がきつかったでしょう」と微笑まれた。バスで途中まで行ったのでそれほどでもなかったですけれど、下からだったら相当きついですね、と応えると、うんうんとうなずく。



橘寺の本堂
「岡寺の三重塔の琴は気付いたかい?」と聞かれる。事前に何かの文章で読んでいたから気付きましたけど、知らなかったらわからなかったですね、と答えると、「そうなんだよ。ほとんどの人は気付かないで、ここで話をしてそうだったんだ、って驚くんだよね」と嬉しそうに話してくれた。また、その琴についても話をしてくれて、昔は法隆寺の五重塔にもあったらしいという話もしてくれた。「法隆寺の五重塔は素晴らしいよね。バランスのとれたいい五重塔だよね。金堂との位置関係もバッチリだし」と言われたので、私も法隆寺が大好きで奈良に来るときにはなるべく法隆寺に行こうと思っているんです、と言うと、そうだよねぇ、いいよねぇ、と嬉しそうにうなずいていた。他の観光客の方が見えたので、会話はここで終わってしまったが、こういうちょっとしたやり取りが嬉しい。こういうやり取りがあると、自然とそのお寺そのものが気に入ってしまうから不思議なものだ。

本堂の手前、右側には観音堂と呼ばれるお堂があり、ここにも橘寺のご本尊と言われる如意輪観音菩薩坐像が安置されている。ご本尊が二つ、というのも珍しいが、人物像と仏像ということでうまく両立しているのかもしれない。ここの如意輪観音菩薩像は今までにもよく見かける菩薩像で、岡寺の如意輪観音菩薩像とは全く異なる。個人的には橘寺の如意輪観音菩薩の方が好きではあるが。

如意輪観音菩薩像の四方には四天王もいらっしゃって、周りににらみを利かせていた。このお堂に入った右側に二人ほどが座れるスペースが設けられていて、ご自由にどうぞ、と写経の道具が置かれている。最初はあまり気にも留めていなかったのだが、バスの時間までまだ相当あり時間を持て余していたこともあり、初の写経に挑戦してみようかな、と思ってしまった。一枚500円というお手頃な値段にもつられたのかもしれない。

硯や筆ではなく、毛筆ペンを利用しての写経なので、ある意味気軽ではある。誰もいないのをいいことに、机の前に座り、用意されている紙を目の前に置く。すでに薄く下書きがされているので、それに沿ってなぞっていけばいいだけなのだが、初めてだし、毛筆など久しぶりだし、ちょっと緊張しているのもあるのか、手が若干震えている。深呼吸をして書きはじめる。筆ペンとはいえ久しぶりの毛筆である。懐かしい感じもして思ったより楽しんでいる自分がいた。書かれている内容は残念ながら理解できず、お経の一部分なのではないかな、と勝手に考える。

最後に住所氏名を書き、願い事を書くスペースもあるのだが、あまり神頼みは好きではないこともあり、願い事は書かなかった。で、代金の500円を払おうとお財布を取り出すと、なんと100円玉が1枚しか入っていない。もちろん千円札はあるが、さすがに千円を払うほど太っ腹でもない。大変申し訳なかったのだが、100円だけ備え付けの箱に入れさせてもらった。今度また訪れる機会があったら残りの400円は払います、と如意輪観音菩薩に頭を下げて観音堂を出た。この観音堂の柱にもまた可愛らしい絵が飾られていた。


あとはバス停まで歩くのみ。5分ほどで先ほどの道路に出て、無事にバス停を見つけることができた。10分ほど待つことになったが、バスに乗り込み、あとは橿原神宮前駅にまで行くだけだ。途中の石舞台のバス停では観光客がたくさんバスに乗り込んできて、あっという間に満員になってしまった。さすが飛鳥といえば古代遺跡、ということで、石舞台には車も人もたくさんいた。今はまだ興味のない古代遺跡だが、いつか興味を持つ日がくるのだろうか。そんな時が来たら、また飛鳥を訪ねてもいいかもしれない。

バスに揺られること30分ほどで橿原神宮前駅に到着した。あとは一気に奈良へ戻るのみ。一日かけて3つのお寺を巡ってきたが、やはり面白いというか楽しい。明日はいよいよ木津へ。ここも公共バスの本数がものすごく少ないので、事前の準備が重要な場所だ。そしてとても楽しみな場所でもある。


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