2015年10月11日日曜日

東海の仏像たち① ~御嵩 願興寺~

東海地方の仏像巡りは初めてです。東海の美仏という本を買い、いつもとは異なる場所の仏像巡りをしてみようと思ったのでした。

大変だったのは、広範囲に広がっていることと開帳期間が限定されているお寺が多いこと。そして要予約とされているお寺が多いことです。開帳期間が合わないのは仕方がないとしても、電話予約が必要な場所はなかなかハードルが高い場所です。さらに、自分が拝観したいと思えるような場所でないと意味がありません。地図を見、交通機関の確認をしながらなんとかいくつかのお寺をピックアップしました。

初日、名古屋からJRや名鉄線をを乗り継いでまず向かったのは、岐阜県の御嵩駅近くにある願興寺というお寺です。ここは予約制でしたが、仏像がなかなかいい感じであり、ぜひとも行きたいと思ったお寺のひとつです。それがあんなことになろうとは、このときは思いもしませんでした。

この日は朝から小雨がぱらつく日でしたが、名古屋に到着した頃から空は少しずつ明るくなってきました。まず名古屋から名鉄線に乗って新可児まで揺られ、新可児で乗り換えて終点の御嵩まで行きます。御嵩駅ではICカードを通す改札がないので、新可児でICカードを窓口に提示すると、そこで御嵩までの運賃が引き落とされ、乗車証明書というレシートが渡されます。なかなか面白い制度ですが、ローカル線ならではといった感じです。そしてそのレシートは御嵩駅に到着する少し前に、電車内で車掌さんに回収されました。
乗車証明書?

御嵩駅です。本当に小さな駅で、駅員もいません。駅員室かと思った部屋は御嵩の案内所でした。その案内所の前を素通りして外に出ても、ひっそりとした道が通っているだけです。お店も小さな販売所があるだけで、時間を潰せるような場所はなさそうです。御嵩は中山道の途中の宿場町だったようですが、時代の波にのまれ、今はひっそりとした町になっているのかもしれません。
御嵩駅前
御嵩駅から周りを見渡す
願興寺はこの御嵩駅から目と鼻の先にあります。約束の10時でしたが、境内はひっそりとしていて人の気配がありません。門をくぐって目に飛び込んできたのは、なかなか立派な本堂です。ですが、痛みがひどいことは一目瞭然でした。屋根の鉄板には多くのサビがあり、柱や板も随分と痛んできています。このような小さな町でこれだけのものを維持していくのは大変なのでしょう。

願興寺本堂

まずは、ご用の方は本堂の裏手にあります建物へと書かれた貼り紙を頼りに、裏手に回ってみます。庭の奥に民家がありましたので、恐る恐る呼び鈴を鳴らしたのですが誰も出てきません。仕方なく電話をしてみたのですが、これもまた誰も出ません。どこかに出かけているのもしれない、と先にもう一つの訪問場所である愚渓寺へ行くことにしました。

住職の自宅へ向かう道

その愚渓寺から11時少し前に戻ってきたのですが、やはり人影はありません。再度電話をしてみると、今度は年配の女性の方が電話口に出ました。「やった!」と思いつつ、拝観の予約をした者なのですが、と伝えると、申し訳なさそうに、今住職は出かけていて拝観はできないと言うのです。話によると、数少ない檀家の方が突然亡くなられて、急遽お葬式が入ってしまったのだと言います。これは残念ですが仕方がありません。誰が悪いわけでもありませんし、こればかりはどうしようもないことです。どちらから来られたんですか、と聞かれたので、東京からです、と答えると、ますます恐縮されてしまいました。もちろんとてもとても残念ではありまし、正直がっかりしてしまいましたが、またの機会がありましたら、と努めて明るくお伝えして電話を切りました。正直、ちょっと泣きそうでもありました。この願興寺の仏像たちに会うだけのためにわざわざ一時間半近くもかけて来たのですから、落ち込まないわけはありません。それでも、今回は縁がなかったということだろう、と自分に言い聞かせて御嵩を後にしたのでした。





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