2014年10月5日日曜日

木津のお寺 その③ ~~海住山寺~~

今度は加茂駅の西口にまわる。小さなロータリーはあるのにバスが見当たらない。バス停の前には二人ほどが座っていて、その前にはワゴン車がとまっていた。バスはまだなのかな、とキョロキョロしているとき、ふとワゴン車のドアに「コミュニティ」と書いてあるのを見つけてしまった。まさかこれがコミュニティバス?

運転手おじさんに聞いてみると、そうだよ、とワゴン車のスライドドアを開けてくれた。確かに運転席と助手席の間には、バスにある運賃箱と似たような透明な箱が置いてある。「バス」だと思って待っていたら乗り過ごすところだった。

結局出発時間になっても他の乗客は来ず、またまた私だけが乗って出発だ。ワゴン車はすぐに車一台がやっと通れるほどの細い道に入っていく。田畑が広がる田園風景の中を右左に曲がりながら進んでいった。

途中、一帯が広い草地のような場所があるのだが、こは昔の都が一時あった場所らしい。そこを走っているとき運転手のおじさんが、ここは昔都だったんだけど流行病でみんないなくなっちゃったんだよね。天然痘だよ、と教えてくれた。へぇ~そうなんですか、と相槌をうつと、昔だよ、今じゃないよ、昔の話ね、といやに強調する。さすがにそれくらいはわかってますよ、と心の中で笑ってしまった。もし天然痘が流行ったのが最近だったら大ニュースになっているはずですから。

そんな話をしながら乗ること15分。田畑の広がる小さな集落の前でワゴン車がとまった。ここから海住山寺までは徒歩だ。

バス(ワゴン車)を降りた場所
この道を抜けて行く

小さな集落を抜け、坂道を登っていく。それほど急な坂ではないにせよ、それなりの勾配があるのでゆっくり登る。目を上げるとその坂のずいぶん先に大きな看板があり、「海住山寺」と書いてあった。あそこがゴールだな、と思い、あそこまで一踏ん張りだ、と思いながら歩き続ける。
しかし甘かった。

そこはゴールでも何でもなかった。ゴールどころかその看板の下の方には矢印とともに800メートルの文字が。嘘でしょ! ここまでもずいぶん登ってきた感があるのにまだこれから800メートルもあるの? それも道はここからさらに急勾配になっている。引き返すわけにもいかず、覚悟を決めて登り始めた。 
一瞬目を疑った看板
こんなヘアピンカーブが続きます

風は心地よくなったとはいえ、日差しはまだまだ暑い。あっという間に汗が吹き出してきた。坂はますます急になりヘアピンカーブが続く。途中、二台の車に抜かされたのだが、二台ともギアを一番ローにして頑張って登っていた。

急な坂が少しなだらかになり一息つきながら歩いていると、先に山門らしき門が見えてきた。やっと着いたか、と道の左側にある山門に続く石段をあがるがどうも変。この石段、最近全く使われていないようで草がぼうぼう生えている。で、山門の先を見ると、なんとまた石段を降りて先ほどの車道と合流しているのだ。なんだこれは? わざわざ石段を登る必要など全くない。ただ疲れが増しただけ。

がっかりしながらもさらに歩みを続ける。もしかしてどこかで道を間違えたのか、と不安を覚え始めた頃、やっと海住山寺と書かれた階段を発見。登っていくと、今度こそ海住山寺の境内が目の前に見えてきた。やっと到着だ。

やっと到着

すでに一組の参拝客はいたが、すぐにいなくなってしまい、結局私の独り占め。門をくぐった正面に本堂が、左手に五重塔がある。この五重塔がまた素敵だ。一目見て、あ、この五重塔は好きだ、と思った。こじんまりとした塔だがバランスが私好み。同じく気に入っている室生寺の五重塔に続く小ささなのだそうだ。

まずは本堂への拝観から。どうぞ奥まで入って近くでお参り下さい、と受付のお姉さんに言われ、ご本尊の近くまで行ってご挨拶。少しふっくらとしたお顔だが優しい顔をしている。ご本尊の左側にある小部屋には、写真や他の寺宝が展示されていた。

それらを見ていると、先ほどのお姉さんが、わざわざご朱印帳を手渡しに来てくて、いろいろと説明をしてくれた。ここの本当の(?)ご本尊は現在奈良の国立博物館に収蔵されているのだが、一般公開はされておらずなかなかお目にかかる機会がないのだそうだ。ところが、今度の10月下旬の特別開帳にあわせて、このご本尊がお寺に一時帰宅されるという。さらに、同じく国立博物館に収蔵されている四天王も帰ってくる。これはまた来るしかないなぁ。

海住山寺の本堂
海住山寺の本堂


バスの時間までまだ一時間以上もあったので、本堂の裏手にある小さな高台の休憩エリアでゆっくるすることにした。あれだけの坂を登ってきただあって、この高台からの眺めは素晴らしい。誰もいないのをいいことに、汗を吸ったクロマーを木の枝にかけて干し、草むらの上に座っていてしばしボケーッとする。

休憩エリアからの眺め

五重塔にも行ってみる。ここの五重塔は屋外にある五重塔の中では二番目に小さいらしい。一番小さい五重塔は室生寺のものだ。海住山寺のこの五重塔も一目で気に入った。サイズもバランスも私好み。大きい五重塔も好きだけれど、これくらいのサイズが個人的には好きである。緑に囲まれた塔でここもまた別の季節に訪れたい場所だ。紅葉の時期もきれいなのだろうな、と想像がつくからだ。

お気に入りの一枚

時期が時期だからなのか、本当に参拝客も観光客もいない。ボーっとしていたときに、ハイキングをしていた年配者のグループが通っていったが、彼らの目的はここ海住山寺ではないようだ。あっという間にいなくなっていた。最後にもう一度本堂に入らせてもらい、中を見させていただいた。再度、開帳の期間は来るべき、という決意(?)と共に、山を下りることにする。

もちろん下りは肺にはまったく負担はかからないが、逆に膝に負担がかかる。どんどん下っていけるのだが、あまり膝に力がかかりすぎないように少し気を付けて歩いていく。せっかく苦労して登ったのに、という思いと、次回行くときはタクシーだなという考えが浮かぶ。10月であれば涼しいのだろうけれど、まあこれくらいの贅沢は許されるだろう。

元来た道を戻り、バス停に到着する。先程のハイキングのグループがいて少し驚くが、もっと驚いたのはコミュニティバスを見た彼らだ。これでは全員が乗れないということで、タクシーを一台呼んで11人のうち4人がタクシーで駅に向かうことになった。リーダー的な方が私にも気を遣ってくれて、全員がワゴン車に乗れるようにしてくれたのだ。私一人がタクシーを使うともちろん割高になってしまうしせっかくのフリー切符の意味もなくなってしまう。みなさん、いい人で良かった。

そんなことで無事に木津のお寺巡りは終了。ここは気に入った。気に入った順は海住山寺、岩船寺、浄瑠璃寺。10月下旬の開帳期間にはまた戻ってこよう。海住山寺はタクシーを利用するとして、他はまたコミュニティバスを利用させてもらおう。公共の交通手段を利用するのは大変な部分もあるけれど、個人的には好きである。

 

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