2015年2月20日金曜日

小川三夫棟梁 実演+講演会 at 名古屋

先日、楽しみにしていた講演会に参加してきた。小川三夫棟梁の実演+講演会だ。小川棟梁といえば、法隆寺の宮大工・西岡常一棟梁の唯一の弟子として知られている。その小川棟梁もすでに60歳を超えている。この機会を逃したら、今度いつこのようなチャンスがあるかわからない。そんなこともあり、ずっと楽しみにしていた。

場所は名古屋のトヨタ産業技術記念館のホール内。先着100名と書いてあったのに、あとからのレポートを読むと260名の人たちが参加していたらしい。早めに並んで前から二列目に座ることができたので良かったけれど、260名も入れるのであれば「先着100名」という文言はいらなかったのでは・・・と少々不満が残る。

が、内容は素晴らしかった。90分という時間だったが、あっという間である。もっといろいろな話を聞きたかったし、実演も見ていたかった。

小川棟梁については本やネットの情報しかもっていなかったのだが、とても気さくな感じの方で、話もとても面白い。でも、きっと仕事場では厳しいのだろうな、と思った。今回、3人のお弟子さんたちを連れてきていたのだが、彼らの振る舞いを見ていると、小川棟梁の厳しさがなんとなくわかる気がする。小川棟梁が話しているときは、3人とも直立不動なのだ。そして、作業をするときもとても迅速に動くし、動きに無駄がない。小川棟梁が特に指示をしなくても、自らの作業をわきまえていて、すぐに動く。これは日ごろからきちんとした指導を受けていなければ、なかなかできないことだと思う。このような場では、笑いを交えてとても優しい感じで話をされるのだが、やはり仕事場では妥協を許さない、良い意味で厳しい棟梁なのだろう。

今回、初めて槍鉋が使われているところも見学できた。槍鉋そのものは展示品を見たことがあったし、使われているところをテレビで見たこともあったが、本物を見るのは初めてである。あの法隆寺や薬師寺の柱はこの槍鉋で削られている。あの柔らかい感触がよみがえってくるようだった。基本、お弟子さんが実演してくれるのだが、時々小川棟梁も実演してくれる。そうなると一気にシャッター音が増え、やはりみんな小川棟梁の技を見たいのだなあ、と思う。もちろん私もだが。前の方に座っていたこともあり、槍鉋で削ったときにできるくるくるとした削りかす(?)をもらうことができた。今は、大事に家に飾ってある。




他にも木組みを実際に組み立てる実演をしてくれて、なるほどと感心させられた。本当に釘などを全く使わず積み木のように組み立てていく。これが法隆寺、薬師寺はもちろん、唐招提寺などの多くのお寺で用いられている木組みなのだと思うと、本当に興味深い。まだまだその仕組みを理解したとは言い難いが、こんどお寺を訪れたとき、また見る目が違ってきそうだ。



小川棟梁の話はいろいろと面白かったのだが、一番印象に残ったのは、「良い道具を持てば、自然と良いものを作りたくなるんです。」という言葉だった。道具、特に大工にとっては鉋などの研ぎが重要なわけだが、しっかりと研がれた良い道具を持っていれば、こちらがあれこれ言わなくても、彼らは自ら良いものを作りたいと思い、作れるように努力していくのだという。だからこそ、まず研ぎなのだ、と語っていた。きっとこれは大工だけに言えることではないだろう。良いものを持つ。良いものを持つことで、良いものを生み出したいという願望が生まれる、というのは、すべての仕事や場面でも言えることのように思う。自分にとって、とても大事な言葉になった。

講演終了後も、多くの人たちが残り、鉋を体験させてもらっていたり、小川棟梁に話しかけたりしていた。私もできれば話を聞いてみたかったのだが、性格上なかなか自ら声をかけることができない。槍鉋のことだってもっと聞いてみたい、触ってみたい、という思いはあるのに、結局何もできず、何も話せず会場を後にしてしまった。後悔しても仕方がないが、もう少し勇気を持てばよかったなあ、と少し反省する。

とにかく楽しかった。小川棟梁が最初に手掛けた法輪寺の三重塔をもう一度見に行かなきゃ、と思ったのは言うまでもない。

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